東芝、英ファンド「2兆円買収提案」は渡りに船か 東芝経営陣が問われる上場維持方針との整合性

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東芝は2015年に不正会計が発覚。翌2016年にはアメリカの原子力発電事業で巨額損失が明らかになった。会社存続も危ぶまれる中、2017年末に約60もの海外投資家を対象にした6000億円の大型増資を実施した。

これによって、会社の資金繰りが安定し、上場廃止も避けられた一方、増資から3年以上経った今でも、モノ言う株主は議決権ベースで約25%を占めている。

3月の臨時株主総会では旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールの投資ファンドで筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントと、アメリカのヘッジファンドであるファラロン・キャピタルがそれぞれ株主提案を出して東芝側と対立。ファラロンの提案は否決されたが、エフィッシモ提案の議案は約58%の賛成を得て可決された。

東芝の成長に欠かせない長期投資家

エフィッシモは2020年の株主総会で、東芝による既存株主への圧力と議決権行使の集計作業に不正がなかったかをめぐり、株主が選任する第三者が改めて調査するよう求めていた。

6月の定時株主総会までに新たな調査結果が出るとみられるが、その結果次第では車谷社長の再任が厳しくなる可能性もある。エフィッシモとは2020年の定時株主総会でも対立し、車谷社長の再任賛成率は約57%にとどまっていた。

もっとも、東芝の再建自体は順調に進んでいる。約50年ぶりに外部から東芝トップに就任した車谷氏は大胆なリストラを次々実行し、業績が回復。1月には約3年半ぶりに東証2部から1部にも復帰した。

車谷社長は東洋経済による3月31日のインタビューで、「東芝での僕のミッションは(社長に就任してからの)3年ですべてやった。フェーズは再建から成長に変わる」と指摘したうえで、今後の成長に欠かせないのが「東芝を長く支えてくれる機関投資家」と断言していた。

モノ言う株主は一般的に配当や事業再編など短期的成果を迫り、投資先企業の株価を上げた後、株式を売却して利益を得るのが常套手段だ。しかし、次の成長事業を中長期的な時間軸で育成したい東芝にとって、モノ言う株主と考え方が大きく違ってきていた。

モノ言う株主がいまだに東芝株を保有するのは、東芝の株価がまだ割安だとみているからにほかならない。4月2日にはシンガポールの3Dインベストメント・パートナーズが東芝株4.7%分を3月29日付で追加取得し、保有比率を7.2%まで高めたことが大量保有報告書で明らかになった。同社は2020年の株主総会で東芝側と対立しており、第2位株主に浮上したようだ。

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