モスバーガーが「高級食パンブーム」に乗る事情 完全予約式で「毎月第2・第4金曜」のみ販売する

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「外食自体が難しい中、モスバーガーとして『ご家庭で楽しめるものをご提供できないか』と考えた。そのことと、当社の中期計画の中で物販事業に視野を広げていることが結びついた」というのが吉野氏の説明だ。

店舗でのテイクアウトとイートインの比率はもともと6:4。現在はコロナの影響で7:3に変化してきているという。写真はモスバーガーの1号店成増店(写真:モスフードサービス)

実はモスバーガー全体としては、コロナ以前よりテイクアウト率が6割と、イートインに対しテイクアウトが優勢だった。現在はさらにこの傾向が進み、テイクアウトが7割になっている。

モスバーガーを家庭で楽しむ人はむしろ増えてきているのだ。しかし、ハンバーガーはファストフードの一種でもあることからもわかるように、「すぐに食べること(即食)」が前提の食べ物。モスのブランドを日常的に家庭で感じてもらえるものはないか、という発想から、食パンにつながったようだ。

ふんわりとした食感と濃厚な味わいを実現

ニュースリリース内では「週末のちょっとリッチな“おうち朝ごはん”」というコピーが採用されている。リッチというのは値段もそうだが、口にすることでぜいたくな気分になってもらうことを意図している。

上質な小麦にたっぷりのバターと卵、生クリームやその他の乳製品を使い、ふんわりとした食感と濃厚な味わいを実現。またキメの異なる小麦粉を使っており、耳までやわらかいのも特徴としている。あえて4つ切りとしたことも、どっしりとした食べ応えを強調し、ぜいたく感を高めた。

試食したところ、味わいもそうだが、生地のキメが細かく舌触りが濃厚。確かに耳もやわらかく、食感の違いというよりは香ばしさの違いとして、耳部分を味わうことができる。確かに食べ応えはあるが、よく厚切りの食パンで感じる、胸に詰まるような感じがなく食べ進められる。

トーストした状態。キメ細かな小麦粉の食感の中にバターや卵、生クリームなどの自然な甘味が感じられる(筆者撮影)

食パン自体の開発や製造は取引先の製パン会社が担当しており、今後受注がさらに増加したとしても対応できる体制とのことだ。ただし季節性のものでなく、継続的な事業であることは間違いないが、まだ試験的な取り組み。例えばモスバーガーのメニューに今回の食パンが採用される可能性などについては未知数だという。

同社では食パンのほかにも食品メーカーとのコラボによるスナック菓子「モスバーガーポテト(テリヤキバーガー風味)」(税込220円)を2021年3月25日に発売。こちらは全国のモスバーガー店舗(店舗限定)のほか、4月からはスーパーや小売店、ドラッグストアなどで販売している。なお、コラボ相手の食品メーカーは香川県に本社を置く味源。さば含有量70%、旨味調味料など未使用のチップス「SABACHi」などが代表商品だ。

そのほか少し意味合いは異なるが、食品宅配のオイシックスとの共同開発で、モスのミートソースをアレンジしたミールキットも2020年9月に発売している(現在は販売終了)。いずれも、店舗でのモスバーガーの提供以外にもブランド訴求のチャネルを広げていこうという目的がうかがえる。

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