立ち食いそばの正体は「茶色いうどん」 そば粉は1~2割!サラリーマンの強い味方「立ち食いそば」の裏側

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「最低そば粉が3割」という法律は、外食店には適用されない

N君:「そば=そば粉でできている」とばかり思っていました。

河岸:そばは本来、そば粉100%で打つものだったのが、誰かが「そば粉に小麦粉を混ぜて打つ」ことを思いついたんだよね。それが当たり前として定着してしまった。輸入の小麦粉のほうが、そば粉よりも断然安いからね。

N君:「十割(じゅうわり)そば」は、そば粉100%ですよね?

河岸:「十割そば」はそう。「二八そば」はそば粉が8割、小麦粉が2割。どちらも普通のそば屋で食べたら、立ち食いそばの倍くらいの値段はするよね。

N君:だから、コストを下げるために、立ち食いそばは小麦粉の割合を増やしている、と。そんなことは法律で許されるんですか?

河岸:そばを乾麺の状態で売るときは、「最低そば粉を3割は入れなくてはいけない」と法律で決まっているよ。そもそも、重量比で全体の3割以上そば粉が入っていれば「そば」と名乗って売れるというのも、おかしな話だけどね。

N君:確かに消費者感覚では、その時点で違和感はありますね……。

河岸:それが、立ち食いそばに限らず安い外食店になると、そば粉が1~2割のものを平気で「そば」と称して売っている店も多い。

N君:小麦粉が8~9割も入っている麺なら、普通の感覚でいえば「そば」ではなく、もはや「うどん」ですね。 

河岸:だから「立ち食いそば=茶色いうどん」ということ。

N君:その理由は「外食店にはJAS法等の法律が適用されない」からですか?

河岸:そのとおり。「そばを乾麺として店で売るときは、3割以上そば粉を入れなければいけない」という法律は、外食店には適用されないから。

N君:でも、小麦粉だと、もっと「白い」ですよね? なぜそばらしい「茶色」なんですか? 着色料で染めている?

河岸:殻に近い部分をひいたそば粉を使うの。殻に近くなると色が黒っぽくなるので、ちょうどいい。着色料で染めたりはしない。

N君:先ほど言っていた「リン酸」というのは?

河岸:「リン酸塩」を入れれば、歯ごたえがつるつるするからね。それに、「リン酸塩」は水を抱えるから歩留まりが上がり、利益率が上がる。

N君:「人気ハンバーグの裏側」でも、「リン酸塩」はカサ増しでよく使われる、とおっしゃっていましたよね。

河岸:ただ、あまり入れると、今度は逆に歯ごたえがなくなってしまうから、ギリギリまで入れる。もちろんそうすると、そば本来の風味、香りはなくなるけどね。

N君:なるほど……。で、奮発して頼んだ「エビの天ぷら」はいかがですか?

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河岸 宏和 食品業界を知り尽くした男

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かわぎし ひろかず / Hirokazu Kawagishi

食のプロや業界関係者のあいだで「食品業界を知り尽くした」と言われる男。大手ハムメーカー、大手卵メーカー、大手スーパー&コンビニ、数々の食品工場での勤務経験から「肉のプロ」「卵のプロ」「スーパー・コンビニのプロ」とも呼ばれる。

1958年、北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、「農場から食卓まで」の品質管理を実践中。「食品安全教育研究所」代表。
これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハム・ソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、卵加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。

著書に『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)、『ビジュアル図解 食品工場のしくみ』(同文舘出版)などがある。
ホームページ「食品工場の工場長の仕事とは」を主宰。 
毎週発行している無料メルマガは、食品問題や事件が起こったときにすぐに解説するなど好評を得ている。

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