なぜ政府の「成長戦略」に期待できないのか? 大切な資産を守り、増やすために必要なこととは?

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もうひとつ、時代遅れの慣行が経済成長を抑制していた例をあげれば、首都圏の空港インフラが十分ではないまま放置されていたことだろう。外国人観光客を含めた潜在的需要を抑制し、他の先進国では成長セクターである観光産業の拡大が抑制されていた可能性がある。

ただこの問題は、本来優先されるべき首都圏の空港や交通網整備の代わりに、1970年代から優先的に地方での公共投資が積み上げられてきたことも背景にある。政府の非効率な財政政策や運営が正され、経済効率を高める首都インフラ拡充に財政資金が回るようになるという意味で、この方面で安倍政権がとっている政策は望ましいと言える。

デフレを放置したことのほうが、より大きな問題

今回の成長戦略を総じてみると、既得権益が固執する慣行や規制が緩和されるという望ましい政策メニューも多少散見される。だが、これまで霞が関が進めてきたプランが多いように思える。むしろ、一方で、消費増税が実現したからか、新しく生まれた権益が一部の業界関係者に行きわたるプランも散りばめられるなど、「成長阻害戦略」になりかねないメニューも含まれている。

とはいえ、そもそも、日本はある程度成熟した資本主義経済国である。航空・交通網の未整備、あるいはインターネットなど新たなインフラの登場などに規制が対応できない問題はあっても、政府や霞が関の規制対応の不出来が、長期にわたる経済成長の大きな阻害になっていたのだろうか。

それよりも経済政策の大きな問題は、物価安定に責任を持つ日本銀行を中心としたマクロ安定化政策の失敗によって、20年弱もデフレ状況を放置するという「引き締め政策」が続いてきたことだろう。これが民間ビジネスの成長を邪魔してきた、あきらかでかつ深刻な失政だと筆者は考えている。

以上のように、アベノミクスによって実現する政策をどのように考えるかは、今後の日本経済や金融市場の行方を考える判断材料として重要である。それを正しく考えるためには、アベノミクスそれぞれの政策の効果を、しっかりとした理屈とともに理解することが必要となる。

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