GPIF改革は間違っている 日本株を買う過ちと、ガバナンスの本質

✎ 1〜 ✎ 39 ✎ 40 ✎ 41 ✎ 最新
拡大
縮小
安倍政権の重要方針は麻生財務相から漏れ伝わることも多い。今回も「6月以降GPIFが出てくる」という言葉に、いったん株式市場は反応したが・・(ロイター/アフロ)

私は2014年4月21日まで、公的年金の運用機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用委員というものを4年間務めた。運用委員とは、簡単に言えば、社外取締役みたいなものである。現在、「安倍政権の官邸が主導して、GPIF改革が行なわれようとしている」という報道が盛んになされている。

私だけでなく、多くの運用委員が4月22日から入れ替えとなり、2名を除いては新しいメンバーで運用委員会が行なわれることとなった。そして、今後は、いわゆる有識者会合で議論された、ガバナンスなどの変更が行なわれることになるだろう。

本質を外している、GPIF改革

しかし、GPIF改革のニュースは日本国内よりも海外投資家に注目されており、私に対する取材も、ほとんどが外資系メディアと海外投資家である。そして、彼らの注目は、アセットアロケーションの変更がどのように行なわれるかである。つまり、彼らは、GPIFが今後何を運用対象資産とするのか、どの資産を買ってくるのかということにしか関心がない。要は、「日本国債を売って、株を買うのかどうか」ということである。

これは誤った議論であり、誤った改革である。今回のコラムでは、現在議論されているGPIFの改革のどこが誤りか、本質はどこにあるのか、本当はどのような改革が望ましいのかについて議論したい。

まず、GPIFが存在することのメリットとデメリットを整理する必要がある。

GPIF改革議論の第1の、そして最大のポイントは、国民が自分の年金を自分で積み立て、自分で運用するのか、政府に預けて、政府が委託してGPIFが運用するのがいいのか、というところにある。

理論的には、政府が余計なことをするよりも個人の自由に任せたほうがいい、という考え方が強力であり、反論はしにくい。問題は、理論と現実は異なるということである。どう異なるかというと、人間は愚かだ、という現実である。人間が愚かであるとすると、愚かな個人が自分で運用するよりも、優れた専門家集団の専門的な組織に委ねた方がいいことになる。これが、GPIFの存在意義だ。

次ページ個人で運用すべきか、政府に委ねるか
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT