「ナイジェリア少女拉致」に潜むイデオロギー 英元首相が憂慮する世界への波及

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事件から半年が経過した。子供達を還すように求める家族たちの訴えはボコ・ハラムに届くだろうか(写真:AP/アフロ)

ナイジェリア人少女240人が拉致された事件は世界を驚かせたが、これはナイジェリアだけの事件ではない。実際、ナイジェリアの苦悩はほかの多くのアフリカ諸国でも共有されている。また、誘拐の背後にある動機はグローバルなイデオロギーに由来している。

このイデオロギーは、宗教への歪んで誤った見方に根差している。少女たちを拉致したグループ、「ボコ・ハラム」の憎むべき指導者は、このイデオロギーに染まった最も急進的な過激派グループの代表にすぎない。

もっとも、サハラ以南のアフリカ全域で原理主義は台頭し続けている。政府はつねに勇気を持ってこの脅威と対峙しているが、実際には原理主義の問題は深刻さを増している。

破壊的イデオロギーは、外部から持ち込まれた

これは偶然ではない。私が1997年に英国首相に就任した際、ナイジェリアはキリスト教徒とイスラム教徒との間に協力関係があるお手本のような国だった。ボコ・ハラムに代表される破壊的イデオロギーは、ナイジェリアの伝統の一部ではなく、外部から持ち込まれたものだ。

今後、ナイジェリアの人口増に伴い問題も増えていくだろう。今日、同国には約1.6億人が暮らしており、これが2030年までに3億人になるという予想もある。キリスト教徒とイスラム教徒がそれぞれ約半分を占めるだろう。平和的な共存環境がなければ世界に甚大な影響を及ぼす可能性がある。

貧困と不十分な開発こそが、原理主義を生む環境が作られる大きな原因だ。開発を阻む最大の要因はテロリズムである。だいたい今の状況で誰がナイジェリア北部に投資したいと考えるだろうか。

この脅威はアフリカだけに限定されない。中東は、イスラム教とその原理主義の分派によって激化した革命と動乱のさなかにある。パキスタンでは、過去10年間に5万を超える人命がテロ事件で奪われた。また、インドやロシア、極東においても、同じイデオロギーとつながる暴力により、罪なき人々の命が奪われ地域社会が破壊された。

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