中国政府は成長を持続可能な水準まで減速しようと努めている。内需主導でサービス業中心型の経済へ移行する過程で、より緩やかな成長へ向かうことは不可避であり、望ましい。しかしそれに伴う課題は計り知れないほど大きく、ソフトランディング(インフレを伴わない経済成長抑制)は簡単ではない。
中国では、多くの地域で大気汚染や水不足が深刻化しているのに、消費を拡大し生活の質を向上させねばならない。債務をGDPの200%を超える水準まで急増させた国が、大投資プロジェクトの破綻を広範囲に引き起こすことなく、成長を徐々に抑制していくのは容易ではない。十分な資力を持つ中国でさえ、リーマン・ブラザーズ級の倒産が1つ起こればパニックに陥る可能性は否定できない。
不景気の増幅は金融引き締めがきっかけ
過去の多くの不景気は、金融引き締めがきっかけで、増幅されてきた。1990年代にグリーンスパン元FRB(米連邦準備制度理事会)議長が「マエストロ」と呼ばれたのは、インフレの抑制と力強い成長の持続を同時に成し遂げたからだ。
公式発表の市場成長予測で判断するなら、リスクは小さいとの結論に行き着く。中国の公式な目標成長率は7.5%だ。7%を予測する人は「弱気筋」と見なされ、6.5%予測は異常とされてしまう。
では現状はどうなのか。大部分の証拠が、中国経済が大幅に減速したことを示している。電力需要の年間伸び率は、2014年の1月から8月までで4%を下回るなど、大幅に低下した。2008年の金融危機を除くと、記録したことのない低さだ。
電力需要の減少によって、国内の石炭産業が厳しい不況に陥り、多くの炭鉱が事実上破産した。住宅価格の低下も、景気の低迷を示す典型的な指標だ。ただし、主な住宅価格指標は、提示価格を評価するだけで、実際の販売価格を評価の対象としていないため、低迷の度合いを正確に評価するのは難しい。
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