「世界中の子どもに初等教育」という難題 貧困層を、無限の悪循環から脱出させよ

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国際連合の「ミレニアム開発目標」の中に、2015年12月までにすべての子どもが初等教育を受けられるようにする、という項目がある。だが達成の可能性は極めて低い。ガザ、シリア、イラク、ナイジェリアの子どもたちは、ここ数カ月間、文字どおり戦火の中に暮らしている。普遍的教育を確保するには、避難民や戦闘地域の子どもでも、無事に基礎教育を受ける必要がある。

教育はこれまでずっと、収入、財産、地位、安全を保障する最良の手段だと考えられてきた。にもかかわらず、何百万人もがつねに蚊帳の外に置かれてきた。世界中の子どものほぼ半分が、基礎教育すら受けられない状況に置かれている。

ミレニアム開発目標が採択された当初5年間は、小学校や前期中等教育機関(日本の中学校に相当)への就学率は、1年当たり1.5%上昇した。

ところが、05年を境に伸びが止まった。世界の最貧国では、前期中等教育を修了できる子どもの割合はわずか36%で、30年でも54%にとどまりそうだ。

最も厳しいのは農村社会に暮らす女子

農村社会に暮らす女子児童が、最も厳しい状況に置かれている。女子児童の約4分の3が、基礎的な初等教育すら受けていない。30年に至っても、女子児童の2分の1は教育の機会に恵まれないと予想される。同様に、女子の約90%が中等教育を修了できない。30年に至っても20%しか下落しない。サハラ以南のアフリカでは、男子児童の普遍的初等教育が達成できるのは69年と見込まれるのに対して、女子児童は86年まで待たねばならない。前期中等教育では、サハラ以南のアフリカの全女子に機会が行き渡るには1世紀を要する。

世界の指導者たちは、世界のすべての子どもたちの能力を開発すると約束したが、これらの数値を見るかぎり、まったくむなしい。最近の研究によると、教育の機会という観点から見てアフリカは非常に遅れていて、30歳代前半の若年成人のうち大学教育を受ける者の割合は、25年でもルワンダ、チャド、リベリア、マラウイではわずか2%、タンザニアとベナンでは3%と予測される。

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