三井造船とキッコーマンを分析する アベノミクスによる円安で、恩恵はあったのか

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三井造船の業績を見ますと、アベノミクスの好影響は前期分の決算を見るかぎり、売上高増加には寄与していますが、利益面ではまだ十分にその影響は出ていません。そして、その売上高の増加には円安の影響が大きいと言えます。海外での売上高は全体の59.7%を占めていますから、円安によって円換算額が増え、売上高を押し上げた部分があります。ところが採算の悪化によって、利益は圧迫されてしまったということです。

船の受注は豊富でも、利益はあまり伸びない

三井造船の業績予想によると、今期の売上高は13.4%増の7600億円と大幅に伸びる一方で、営業利益は5.2%増の210億円にとどまるとの見通しです。

売上高が伸びるほどの受注は持っているようですが、利益は大きくは増加しないということです。理由はふたつあり、ひとつは今期も引き続き船腹の市況が緩み、採算の悪い案件が増えること。もうひとつは、人件費や電気代、原材料費などの原価が上がる可能性が高いことです。

ただ、業績予想は基本的に厳しめの数字が出る傾向がありますから、実際はもう少しいい結果が出るかもしれません。

ちなみに、船舶は受注から完成まで長い期間がかかりますから、造船会社の業績は、景気の波から1~2年遅れる傾向があります。たとえば、船が完成する頃には景気が悪くなっていて、船が余ってしまうケースもよくあるのです。さらに、船舶は価格が変わりやすい市況商品だということにも注意が必要です。

このように、造船会社の業績は大きな波があるという特徴があります。業績の波が比較的大きな業種の場合、ある程度、財務内容をよくしておかないと、不況が訪れたときにしんどくなるのです。そのため三井造船も、返済不要の資金の調達比率を表す自己資本比率(純資産÷資産、9~10ページ参照)は34.7%と高い水準になっています。

景気循環に業績が大きく左右される会社の場合、比較的高い自己資本比率が必要となるのです。

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