ゴルフは風になびく柳の枝のように

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プロゴルファー/青木 功

 60歳を少し過ぎたころは「いくつまでアメリカのチャンピオンツアー行くんだい」と、何人もの人に言われたものでしたが、65歳を過ぎた今では、皆があきれているのか勝手にしろと思っているのかわかりませんが、こうした質問はなくなりました。だから自分で言いますが、今年も12~13試合はアメリカで戦うつもりです。
 それに加え、ジュニアゴルファーのための「青木功ジュニアクラブ」、去年から始めた子どもたちのためのプロアマゴルフ「ザ・レジェンド・チャリティプロアマ」など、社会貢献活動も継続していく予定です。

今年は体調もいいので、チャンピオンズツアーは2月のフロリダシリーズから参戦することに。試合に向け体をフロリダの気候に慣らさなくてはと思い、3月に行われる日本女子プロゴルフの開幕戦の開催コースである琉球ゴルフクラブを中心に沖縄でキャンプを張ったのです。
 ご説明をするまでもなく、寒い日本から直接フロリダに飛んでもよいことはありません。セーターの上にウインドブレーカーを着込んでゴルフをするのとシャツ一枚とでは、天と地との開きがあります。

年に何度かアマチュアの方とゴルフをしますが、気候にはあまり関心がないようで、夏でも冬でも同じ番手を使う人が多いんです。たとえば150ヤードのパー3。確か昨年の夏だったと思いますが、知人がパー3を見事6番アイアンでワンオン。それで「150ヤードを6番ですか、若い人に負けないほど飛びますね」。そう言った記憶があるのですが、この冬、その方と再びゴルフをご一緒すると、そのホールでまた6番アイアンを使うんです。
 セーターの上に、ウインドブレーカーを着てるんですよ。厚着のゴルフは体が十分回らず、10ヤードは飛距離が落ちます。その上気温が低く、アゲンストの風が吹いてなくてもさらに10ヤードほど飛距離が落ち、加えてボールも冷えていますから、もっと飛距離は落ちるんです。ゴルファーがいくら頑張っても気候には勝てない、こっちがその土地の気候や風土に合わせなくちゃいけないってことなんです。

1月の沖縄は、晴れていると22~23度になるので、いい汗をかいた2週間でした。キャンプは足腰を鍛えることと、体の柔軟性を保つことを心掛けますが、何かの本で読んだ「ゴルフは柳の木に似てる」、これが頭の中にあるんです。柳の枝は風の強さに順応して揺れるもの。さわやかな春風に、ゆったりと気持ちよさそうになびいています。自分にはその光景がアプローチの腕の振りのように、夏場に多い台風の風は大きなテークバックに大きなフォロー、ちょうど、ドライバーのフルショットのように見えるんです。どんな風にも対処できるのは柳の木にたくましい根っこがあるからこそ、と言っておきましょう。

プロゴルファー/青木 功(あおき・いさお)
1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エイジシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。
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