ゴルフトーナメントに重要なもの ヤマハとヤマハ発動機社員の「おもてなし」に感動

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女子プロツアーの、ヤマハレディースオープン葛城の大会に少し携わることになって、ほぼ1週間、大会会場にいた。

昨年の大会で地上波の中継をやめて、BS朝日とインターネット中継を軸に長時間の放映をし、ゴルフ関係者たちの注目を浴びたことでも有名である。

実は、その中継や、初日から4日間、30分番組を構成して、その日のハイライトやゲームの流れ、そして翌日の展望などを夜8時にネットで流す役割をしていた。それは成功裏に終わった。

ところで、トーナメント期間中にふと思ったことがある。僕がゴルフマスコミの世界に入った1970年代初頭から、トーナメントが一気に伸びた。ジャンボ尾崎、そして青木功などのスーパースターがいたからだ。

その時期からトーナメントというイベントもどんどん進化して、ギャラリーが歩く・観戦するゾーンを、選手のプレーを妨げないように区分けする、ローピングという方法を米ツアーから見つけてきて採用した。

さらにギャラリースタンドやギャラリー広場といった売店などができて、施設や運営マニュアルなどは、どんどん成熟し、バブル時代は、資金に飽かせて豪華になった。

しかしその後、トーナメントに関する運営マニュアルにしても、仕組み、仕掛けにしても、すでにバブル時代からバジェットの細目金額が減っただけでなく、進化は止まったと思っていい。

それに加えて、地上波のテレビ中継は録画がほとんどで、ライブで放映することもなくなってしまった。視聴率が取れないというのが、おそらく大きな理由だろう。

そこで登場したのがBS放送とインターネットである。ヤマハレディースは、その先駆者であり、さらなる進化を追い求めている。

でも……と思う。それらも重要なことだけれど、僕がいちばん感心したことが一つある。

早朝から、ギャラリーがコースへ入ってくる動線に、ジャンパーを着て丁寧に「おはようございます。気をつけて行ってらっしゃい。今日一日、楽しんできてください」と深々と頭を下げて誘導するスタッフが20人ほどいたのである。その声を聞きながらスタートホールへと向かっていく。こんなすがすがしいホスピタリティをトーナメントで見たことがない。

聞けば、アルバイト学生ではなく、ヤマハとヤマハ発動機の新人社員たちだった。新入社員教育を兼ねた研修なのだろう。

進化とは、なにも技術や金銭に頼るだけではなく、最後はマンツーマンのコミュニケーションだと思う。もう一度、ゴルフトーナメントを考えるときには、まず初めの一歩から考え直す必要があると思う。

週刊東洋経済 5月24日号

三田村 昌鳳 ゴルフジャーナリスト

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みたむら しょうほう

1949年生まれ。大学卒業後、『週刊アサヒゴルフ』副編集長を経て、77年にスポーツ編集プロダクション(株)S&Aプランニングを設立。日本ゴルフ協会(JGA)オフィシャルライター、日本プロゴルフ協会(JPGA)理事。逗子・法勝寺の住職も務める。

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