古くさい野球界が、やっと変わり始めた 侍ジャパンが打ち破る、プロ・アマの壁

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もうひとつの策が、Kボールだ。硬式球と軟式球の中間ほどの硬さで、跳ねにくく、飛距離が出にくいことが特徴とされている。硬式球より危険防止の点で優れるため、中学校の校庭では硬式球の使用を認められないものの、KボールならOKというところが少なくない。ひと昔前のように空き地がなくなり、公園で野球をしづらくなったことへの打開策として、校庭をもっと有効利用しない手はないはずだ。Kボールがその突破口となるかもしれない。

五輪種目復活を目指す

「このままでは、野球人口はどんどん減っていきます。プロもアマもいいとこ取りを互いにして、一本になってやっていくべきです。2020年東京五輪での競技種目復活も目指して、一緒にやっていきたい」

そう話す鈴木は、野球を世界に普及すべく動いている。フランス野球・ソフトボール連盟の名誉会員である吉田義男と協力し、今夏にはフランス、オランダ、ベルギー、日本の4カ国で国際大会を実施する予定だ。日本からは社会人ナンバーワンを決める都市対抗野球の優勝チームが出場する。野球ファンの間では知られているが、オランダはヨーロッパで最も野球が盛んであり、ここ5~6年で急速にレベルアップを遂げている。さらに言えば、国際オリンピック委員会の委員はヨーロッパが多数を占めるため、かの地で野球を普及させるのは、競技種目復活に向けて不可欠だ。プロ側も、さまざまな点で協力しているという。

日本社会の縮図としての野球界――。

プロとアマがいがみ合ってきた野球界は、競技人口&観客減少という危機に直面し、ようやく変わろうとしている。その歩みは、人口が減少の一途をたどる日本社会にとって、参考になるはずだ。昨今のビジネスシーンでは、多くの仕組みが日々刻々と変わっている。むしろ変わることができなければ、生き残ることはできない。

球界に明るい未来が訪れることを、ひとりの野球ファンとして心より願う。同時にひとりのジャーナリストとして、今後を厳しく見ていくつもりだ。

(=敬称略)

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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