おやじスポーツ、野球はこのまま衰えるのか 日本社会の縮図としての野球界
サッカーというライバル
英国のスコットランドでセルティックの中村俊輔(現・横浜Fマリノス)を取材していた4年間、現地記者から返答に窮する質問をされることがよくあった。「日本では野球とサッカー、どっちが人気なの?」というものだ。
少し考え、こう答えていた。
「若者にはサッカーが人気で、中年より上には野球かな」
明るい未来が待つ21歳の若者と、老後の人生を過ごしている80歳の高齢者――。プロチームが誕生してからの年齢を人間に例えると、日本におけるサッカーと野球はそう言える。
Jリーグが1993年に産声を挙げた一方、初めてのプロ野球団である大日本東京野球倶楽部(現在の読売ジャイアンツ)が誕生したのは今から80年前の話だ。「スポーツは時代を移す鏡」と言われるが、とりわけ野球にはよく当てはまる。
終戦の1年後にリーグ戦が再開されたプロ野球は、戦後、日本人に生きる活力を与えてきた。川上哲治の下、長嶋茂雄や王貞治が活躍して巨人がV9を達成したのは、高度経済成長の頃に重なる。それから時は経ち、スポーツ界における野球の地位、人気も変わってきた。グローバル化の現在、ダルビッシュ有や田中将大というスーパースターが海を渡るのは当たり前の時代だ。
一方で、取材現場に身を置く記者のひとりとして言わせてもらうと、プロ野球は時代の潮流に乗り遅れている点が少なくない。はたして、人口が減少の一途をたどる日本で、多士済々のエンターテインメント業界とパイを奪い合う中、80歳になったプロ野球は今後、どのように生き延びていくのか。あるいは人間と同じように数十年後、寿命を迎えるのか。現状を見ると、目を覆いたくなるような事実がいくつも浮かび上がってくる。
まず2014年の日本で、ナンバーワンのスポーツコンテンツが、サッカー日本代表であることに異論を持つ者はいないはずだ。
「テレビスポーツデータ年鑑」の調査によると、「普段、テレビで実況中継を見るスポーツ」は、2000年にはプロ野球が78%、サッカー日本代表が41.4%の人数割合だったものの、2011年には前者が43.6%、後者が45%と逆転する(上表参照。ちなみに、同年のJリーグは16.8%、野球の日本代表戦は27.1%)。ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会が開催された2010年には、テレビでの報道件数でサッカーが野球を上回った。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら