おやじスポーツ、野球はこのまま衰えるのか 日本社会の縮図としての野球界

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先ほどの「子供の年齢別スポーツ実施状況調査」には、続きのデータがある。7~8歳以上で経験のあるスポーツを見ると、野球がサッカーを逆転しているのだ(下グラフ参照)。サッカーと比べ、遅い年齢で野球を始める子どもたちが多く存在する。

一方、高校の硬式野球部員数は近年まで右肩上がりで上昇してきた。しかし、2009年にピークを迎えて以降、減少に転じる(右グラフ参照)。これまでは、幼少の頃にグローブを手にした少年が辞めずにプレーしてきた結果、高校野球の部員数が増えてきた。だが、いよいよ人口減少率が高まり、高校野球部員数も下降し始めている。おそらく今後は、減少の一途をたどるだろう。

そうした事情を総合すると、近年の日本において、野球は敷居の高いスポーツになっていると言える。コア化が進む野球界で同時に懸念されるのは、野球にまったく興味を示さない層が増えていることだ。事実、プロ野球12球団の観客動員数は2009年をピークに減少している(右グラフ参照)。今季は千葉ロッテマリーンズの本拠地QVCマリンフィールド、西武ドームで閑古鳥の泣く状況だ。

スポーツ的観点から見ても、野球にはライト層に受け入れにくい側面がある。ゴールに一喜一憂できるサッカーと比べ、野球はルールを知らないと楽しみづらい。さらに言えば、3月末から10月中旬までに144試合を戦うプロ野球は、“マニアック”なスポーツだ。朝の連続ドラマと同じで、紆余曲折のストーリーを満喫するには、毎試合の結果を追い続ける必要がある。

メジャーの総収益は、日本の4倍

片や、数カ月に1度行われるサッカー日本代表戦は、もっと“イベント的”に楽しみやすい。毎週末開催されるJリーグに興味がなくても、ザックジャパンの試合になると青いユニフォームを着てスポーツバーに出掛け、友人たちとお酒を飲みながら歓声を送る。戦術やJリーグの優勝争いは知らなくても、カラオケやアイドルのコンサートと同じような気軽さで楽しめるのが日本代表戦だ。W杯が開催されるのは4年に1度で、そこに予選が絡まるというストーリー展開も実にわかりやすい。スマホやタブレットで情報&コミュニケーションツールにあふれる現在、日本代表戦は極めて現代人向けのエンターテインメントと言える。

プロ野球は日本でそうした現状に置かれている一方、世界的に見れば“外敵”にもさらされている。最たるものが、アメリカのメジャーリーグ(MLB)だ。

阪神タイガースのマット・マートンは日本プロ野球のレベルをメジャーと3A(マイナーリーグの最上位)の中間である「4A」とたとえていたが、日本人選手のトップクラスは当然のようにアメリカ球界を目指すようになった。実力差の議論はさておき、報酬面ではとても太刀打ちできない。田中将大は楽天時代に4億円だった年俸が、ヤンキースに移籍したことで23億円まで膨れ上がっている(金額はいずれも推定)。

2010年時点の総収益を比べると、MLBが5000億~5500億円に対し、NPBは1400億円と4倍の差をつけられている(「日経ビジネスオンライン」より)。さらに興味深い事実は、1995年時点では、両者ともに約1400億円で同程度だったことだ。

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