為末さん、スポーツの目的って何ですか? 勝利? それとも、エンタメ性?

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ビジネスパーソンにとって、論理的な思考はとても大事な能力です。ただ、それだけでは、インパクトのある事業を創造することはできません。
「インパクト志向」については、『インパクト志向』(田中裕輔著)の中で、詳しく説明されている。
いちばん大切なのは、「思考」ではなく「志向」です。「限られた人生の中でどんなインパクトを与えたいか?」――それを考え抜き、世の中のイシュー(重要な問題)を解決することによって、インパクトある事業が生まれるのです。

この連載では、『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』『インパクト志向』の著者であり、靴のネット通販を営むロコンドの田中裕輔さんが、 各界で大きなインパクトを与える新世代リーダーと対談します。第3回目は、スポーツという枠を超えて活躍する、元プロ陸上選手の為末大さんです。

スポーツとビジネスの違いとは?

田中:はじめまして。靴とバッグの通販サイト、ロコンドを運営している田中と申します。今日はよろしくお願いします。

さて、早速ですが、今日、為末さんと対談させていただくなら、やっぱり「スポーツ×ビジネス」が大きなテーマかなあと思いまして。議論したいアジェンダを3つ、リスト化してきました(笑)。これなんですが……(紙を渡す)。

為末:おおっ(笑)。

田中:私、スポーツはド素人なので、間違っていることがあるかもしれませんけど。

早速、ひとつ目に話をしたいのは「スポーツの目的」についてです。もう少し詳しく言うと「スポーツ産業」「チーム」「選手」という3階層において、それぞれの階層の目的は何なのか、そしてそれらは3階層間で合致しているのか、ということです。

ビジネスの場合、「産業」「企業」「個人」の3階層があるとすると、3階層とも、あるべき目的は「利益の最大化」、もしくはドラッカー的に言うと「顧客の創造」で基本は合致しています。できているかどうかは企業や個人によってまちまちですが、少なくとも「あるべき目的」は合致している。

一方で、スポーツの世界はどうなんだろうというのが僕の中ではシックリこなくて。というのは、「スポーツ産業」全体で考えるとお客様を喜ばせること、つまり顧客満足度が優先順位1位の目的であると思っています。一方で、「チーム」や「選手」個人の目的を考えたとき、お客様を喜ばせるのではなく、「勝つこと」にプライオリティが置かれている気がします。つまり「あるべき目的」が、産業という階層とチームや選手という階層で違うんじゃないか、と。

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