僕が「為末大学」を作ったワケ 新世代リーダー 為末大 元プロ陸上選手
タレントでも、政治家でもない道
8月18日。東京・渋谷にある国連大学のウ・タント国際会議場で開かれたイベントを皮切りに、あるプロジェクトが始動した。その名も「為末大学」。「侍ハードラー」の異名を取った元トップアスリート、為末大が発起人である。
為末はロンドン五輪代表選考を兼ねて今年6月に開かれた日本選手権への出場を最後に、25年にわたる現役活動に終止符を打った。ロンドン大会こそ逃したものの、過去3度の五輪出場を果たし、2001年の世界選手権エドモントン大会、05年の同ヘルシンキ大会ではいずれも3位に入賞した。特に01年の銅メダルは、陸上世界大会のトラック競技で日本人初のメダル獲得という快挙だった。
輝かしい選手生活を離れ、歩み始めた第二の人生。テレビのコメンテーターや講演などを依頼されるが、職業としてみると「元陸上選手」以外、明確に何者だとはいえない。為末は「できればタレントではない道に行きたい」と言う。政治の世界にもまったく関心がない。
日本選手の場合、企業に勤務しながら競技を続ける実業団スタイルが主流だ。しかし、為末は法政大学を卒業後に実業団選手として入社した大阪ガスを24歳で辞め、レース出場の賞金とスポンサー収入で生計を立てるプロ選手という、“異端”の道を歩んだ。コーチもつけず、自らの理論で編み出した練習や調整方法などで成果を残してきた。王道を歩まないのが為末流。では、為末が今後目指す道とは何なのか――。