僕が「為末大学」を作ったワケ 新世代リーダー 為末大 元プロ陸上選手

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為末 大
元プロ陸上選手
為末 大
1978年広島県生まれ。1993年、全日本中学校選手権100m・200mで二冠、ジュニアオリンピックでは当時の日本記録を更新。以降、インターハイ、国体、世界ジュニア選手権などで短距離の新記録をマーク。法政大学へ進み、日本学生選手権400mハードル3連覇。シドニー、アテネ、北京五輪に出場。世界選手権では2001年エドモントン大会にて3位に入り、トラック競技で日本人初のメダル(自己ベスト47秒89を記録)、2005年ヘルシンキ大会でも銅メダルを獲得。著書に『日本人の足を速くする』(新潮新書)、『走る哲学』(扶桑社)など。
陸上競技・男子400mハードルの日本記録(47秒89)を持ち、シドニー、アテネ、北京と過去3度に渡り五輪に出場。大企業に所属しながら競技を続けるアスリートが大半の中、為末大氏はレース出場の賞金などで生計を立てる、日本でも数少ないプロの陸上選手として活動を続けてきた。
その潔い人生選択などから「侍ハードラー」の異名を取った彼は今年6月、競技生活25年にして現役を引退。その直後、「為末大学」を立ち上げるなど、早くも新たな道を歩み始めている。
彼が考える競技人生後のセカンドキャリアとは。また、アスリートとして「勝利」にこだわってきた彼の、これからを支える人生哲学とは。

タレントでも、政治家でもない道

8月18日。東京・渋谷にある国連大学のウ・タント国際会議場で開かれたイベントを皮切りに、あるプロジェクトが始動した。その名も「為末大学」。「侍ハードラー」の異名を取った元トップアスリート、為末大が発起人である。

為末はロンドン五輪代表選考を兼ねて今年6月に開かれた日本選手権への出場を最後に、25年にわたる現役活動に終止符を打った。ロンドン大会こそ逃したものの、過去3度の五輪出場を果たし、2001年の世界選手権エドモントン大会、05年の同ヘルシンキ大会ではいずれも3位に入賞した。特に01年の銅メダルは、陸上世界大会のトラック競技で日本人初のメダル獲得という快挙だった。

輝かしい選手生活を離れ、歩み始めた第二の人生。テレビのコメンテーターや講演などを依頼されるが、職業としてみると「元陸上選手」以外、明確に何者だとはいえない。為末は「できればタレントではない道に行きたい」と言う。政治の世界にもまったく関心がない。

日本選手の場合、企業に勤務しながら競技を続ける実業団スタイルが主流だ。しかし、為末は法政大学を卒業後に実業団選手として入社した大阪ガスを24歳で辞め、レース出場の賞金とスポンサー収入で生計を立てるプロ選手という、“異端”の道を歩んだ。コーチもつけず、自らの理論で編み出した練習や調整方法などで成果を残してきた。王道を歩まないのが為末流。では、為末が今後目指す道とは何なのか――。

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