プレッシャーの中で自分のベストを出す

 

プロゴルファー/小林浩美


 ロンドン五輪での、体操の内村航平選手の金メダルの取り方には敬服した。
 4年に一度しかないチャンスで、(どんなプレッシャーがかかるのか、経験がないのでわからないが、)内村選手は周りからの重圧と自分が自分にかける重圧の中、勝ちにこだわって、演技内容を変え、確実に、そしてしっかり点を取ってきた。それは、演技すべてに高いレベルを持っているからこそできること。トップの中のトップの証しだ。そんな内村選手でも、団体戦ではミスが目立ったらしい。

 

ゴルフでもミスをしない人はいない。優勝を争う大事なプレーで、自分が求める理想のゴルフを追い続けて、「こんなはずじゃない」と思うと、試合の流れはいい方向には展開しない。それは、自分の最高とするところからの引き算での考え方なので、ちょっとしたミスでも大ミスに感じて、空回りが始まる。
 では、最初から目標を低めに設定すればいいのかというと、それはそれで中途半端で不満の残る戦いとなる。あくまでも目指すところの高い目標を掲げ、自分のベストを出していく。そういう中で、ミスをしない人はいない。ミスの幅をどれだけ最小限に抑えられるか、リカバリーできる技をどれだけ持っているかが、トップに立てるかどうかの分かれ目になる。

ゴルフでミスを最小限に抑えるには、まずショットの精度を高める。同じところに何度でも打てる技術を養うことで、スイングの質が向上し、それが見た目の美しさにつながる。低い球、高い球の打ち分けや、意識的な右左への曲げ。さらに、グリーンを外したときにアプローチの種類をいくつ持っているかなど。こうしたことは、積極的にピンを狙う、攻めのゴルフをすることによって養われることが多い。
 プレー中、たくさんの引き出しを持っていれば、状況に応じていろんな対処ができる。心に余裕を持たせ、余分なプレッシャーも感じなくて済む。とはいっても、いろんなことができると試合でより高みを目指して、最高のものをギャラリーに見ていただきたいと思ってしまう。さまざまなプレッシャーがあり、対戦相手もいる中で、試合ではその時その時の自分の気持ちと、ゴルフの調子との調和を図りながらプレーをすることになる。
 この調和が取れないと、優勝争いで、理想と最高を追い求めすぎて自滅して後で悔やむ。あるいは、悲観しすぎて中途半端なプレーになってしまう。自分のベストを出すには、状況に応じたさまざまな切り替えがポイントとなる。

内村選手は団体戦でうまく調和しなかったものを個人戦で見事に切り替えた。あの気持ちの切り替えの速さ、何をどうするのかといった決断力。そして、それを迷わずやってのけた心の強さ。トップアスリートはさすがである。

 

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。

 

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