主要業界別・2010年の見通し~格付け回復への条件《ムーディーズの業界分析》

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 日本の航空会社は、収益の激減、業界を取り巻く環境の不透明性の高まり、フリーキャッシュフローの継続した赤字などにより、10年の厳しい事業環境が続くであろう。国際線旅客数は経済危機前の水準に戻りつつあるが、国内線旅客数は前年と比較して数パーセント程度の減少が続いている。座席キロ数(供給量)を絞ることで座席利用率は改善しているものの、価格競争が激化していること、イールドの低下により売上高と利益が圧迫されていることが懸念である。

日本の航空業界は、日本航空の再建の行方、高速道路料金の変更を一例とする、新政権の方針が競争環境に影響する可能性といった不確実性にも直面している。営業費用は、燃料のスポット価格が上昇しており、10年3月期初めに見込んでいたコストベースの低下が達成される可能性が低くなっていることもネガティブな要因であろう。

日本の航空会社は戦略的投資を行う局面にある。10年の羽田空港と成田空港の拡張に合わせた機材再編のための多額の設備投資を考慮すると、短期的にはキャッシュフローの赤字が続くとみられる。したがって、脆弱なバランスシートが短期間で改善する可能性は低いとムーディーズはみている。

ムーディーズは09年11月、全日本空輸(ANA)の格付けをBaa3からBa2に引き下げ、10年1月には日本航空インターナショナル(JALI)の格付けをCaa1からCaに引き下げた。ANAの現在の格付け見通しは安定的である。格付けをモニタリングするうえで、ムーディーズはANAがどのようにして収益性の回復とレバレッジの引き下げを着実に進めていくかに注目している。

10年1月19日、日本航空(JAL、格付けなし)は、会社更生法の適用を申請した。これに先立ち、ムーディーズは1月13日、JALIの長期債務格付けおよび発行体格付けをCaa1からCaに引き下げた。JALグループの再建は、企業再生支援機構の主導で行われ、同機構は事業継続のための出融資を行う。ムーディーズは、新たな再建計画の発表を待ちながら、状況の推移をモニターしていく。

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