主要業界別・2010年の見通し~格付け回復への条件《ムーディーズの業界分析》

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ANAへの影響

JALの再建は、ANAにとってポジティブな側面とネガティブな側面があるとムーディーズは考えている。

ANAにとってプラス要因となりうるのは、たとえば、再建中のJALの運航に対する懸念からANAへの乗客のシフトが生じる、羽田空港および成田空港の拡張においてANAへの発着枠が相対的に多く割り当てられる、というような場合である。

逆に、JALの再建がANAにとってマイナスとなる場合もある。たとえば、JALが不採算路線の削減・撤退を行い、社会的要請から政府がANAにそれらの路線の引き継ぎを求める、多額の負債削減や事業リストラを実施した再生JALが、より競争的な価格を提供し、ANAが追随を迫られる、あるいは顧客を失うリスクに直面する、といった場合である。

これらのポジティブな要因やネガティブな要因は、複合的に発生するであろう。しかし、少なくとも短期的には、ANAにとっては事業機会が広がる可能性があると予想される。

仮に日本の航空業界の構造自体が再編--たとえば国際線事業が1社に統合--されれば、ANAに影響が及ぶ可能性がある。しかし現時点で、より詳細な情報がない中で、JALの破綻をきっかけに航空業界全体の再編がどのような形で進むかを予測し、その影響がANAにとってどの程度事業機会となりうるのかを推測することは難しい。

オープンスカイ協定

09年12月、米国と日本は航空自由化協定(オープンスカイ協定)を締結することで合意した。同協定は、羽田空港の国際線サービス拡張のための新滑走路が完成する10年10月に発効する。協定締結により、航空会社は2国間の路線の最適化と増便に加え、コスト削減と事業効率の改善を実現できる可能性がある。

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