新薬承認のキーマンに流れる製薬マネーの驚愕 審議会委員への多額の金銭授受は妥当なのか

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私たちが検証した5つの薬事・食品衛生審議会の部会に所属する委員108 名のうち50%にあたる54人が医師だった。支払総額は1億1576万5006円、平均支払額は107万1898円だった。

2016年度に製薬企業から1回以上の支払いを受けた委員は51人(47%)で、50万円以上の支払いを受けた委員は32人(30%)、500万円以上の支払いを受けた委員は8人(7%)だった。少なくとも1回以上の製薬企業から支払いを受けた51人の会員のうち、38人(75%)が医師だった。

第二部会委員への支払いは全体の半分以上

特筆すべきは、医薬品第二部会の委員への支払総額は6619万8442円で、5つの委員会の全108人の委員への支払総額全体の57.2%を占めていた。また、1人の委員への支払額で最も高額だったのは、1086万3404円だった。

表2では、部会ごとの支払いと委員が記載した利益相反書の整合性について示した。

5つの部会で8530件の申告書が確認されたが、そのほとんどが医薬品第一部会(3676件)と医薬品第二部会(4446件)の委員による申告だった。

そのうち、409件(4.8%)の申告では、データベースから抽出した金額よりも低い支払額が記載されており、特に409件中112件(27.4%)は、正しい金額が開示されていれば、委員が薬の承認の決に参加できなかった(1社から50万円以上を授受)可能性がある。

余談ではあるが、私たちが論文執筆中に厚生労働省から公開された利益相反申告書を検証していた際、3人の委員からの90の申告が公表されていないことが明らかになった。私たちはすぐにこれを厚生労働省に問い合わせた。すると「確認する」と言われたのち、数日中に公開された。新たに公開されたデータは今回の研究には含めなかったが、いかに厚生労働省が薬事・食品衛生審議会の委員の利益相反についてずさんな管理をしているかが明らかになった形だ。

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