リーマンショック後の景気悪化によって2009年7月には5.5%にまで上昇した日本の失業率は、今年3月には3.6%(季節調整値)に低下している。日本においては、3%台半ばという失業率の水準は、需要の不足によって生じる失業がほぼ解消されたことを意味していると考えられている。金融政策や財政政策でさらに需要を作り出しても、これ以上失業率を引き下げることが難しいという状態になっているわけだ。
失業率が低下しても雇用のミスマッチが残る
不況になって需要が不足すると失業率は上昇するが、反対に需要を増やしていっても失業率をゼロにすることはできない。自分の希望する給与や仕事の内容と企業が求めている内容が合わないために、仕事を探し続ける人が必ずある程度は残ってしまうためだ。現状よりも大きく失業率を引き下げるためには、こうした求人内容と求職内容のズレを解消するような政策が必要だ。
有効求人倍率は、公共職業安定所(ハローワーク)の求人・求職の状況を示す統計だ。求人数と求職者数が同数であれば1となり、1を上回ると求職者数よりも求人数の方が多く、人手不足の状態と言える。ハローワークを通じて仕事を見つける人は、仕事探しをする人の一部にすぎないので、必ずしも労働市場の正確な縮図とは言い切れない。しかし、多かれ少なかれ似たような状況であることは間違いないだろう。
3月の職業別の有効求人倍率を見てみると(右表)、職種によって倍率が大きく異なっていることがわかる。
多くの人がホワイトカラーのサラリーマンとして思い浮かべる事務的職業の有効求人倍率は0.34倍にすぎないが、建設・採掘の職業では2.84倍に上る。多くの人が事務の仕事を探しているが、日本経済で今、求められているのは建設やサービスに関連した仕事をする人たちなのだ。
東日本大震災の復旧事業などでは、建設関係の技術者が不足していると伝えられているが、事務的な仕事を探している人たちのほとんどはこのような技術を持っていない。求人と求職の間のミスマッチは非常に大きく、事務的な仕事を探している人たちが全員希望している仕事を見つけられるようにするためには、経済が過熱するほど景気がよくならないと無理だ。
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