農業よ農民よ!経営者たれ 直売所革命vs「6次産業」化--木内博一・農事組合法人和郷園代表理事/長谷川久夫・農業法人みずほ代表取締役社長

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“分裂”の伏線は、あの冷凍工場だ。「当初は和郷園でやろうとしたが、賛成が得られない。が、どうしてもこれをやらねば、和郷園自体がダメになる」。やむなく、株式会社の前身、有限会社・和郷の事業とした。

二重構造化によってグループの多角化・成長に拍車がかかる。株式会社が成長すれば、トレーサビリティや品質管理のコスト吸収力が増すから、農家にとっても損はない。

だが、遠い将来、株式会社と農家の間に取り返しのつかない亀裂が走る不安はないか。「(農家の)1軒1軒はみんな社長。販売も(株式会社に)任せきりはダメ。自分の分身なんだから、自分でちゃんとチェックしなさい。そう言っている」。

任せきりになったら、かつての農協と農家の関係に逆戻りだ。

講演で地方に呼ばれ、「農協が何もしてくれない」とグチられると、木内は決まって答える。「お前は農協の下請けか。なら、農協も儲かっていないんだから、儲からないのは当たり前だろ。そんなことを言うヤツに経営者の資格なし。早く農業辞めて、農協の職員にでもなれや」。

農家の個別所得補償は「堕農の政策だよ」

たびたびテレビに取り上げられ、みずほの村は午後3時にはほぼ品切れとなる。最近は取材を断るほどの盛況だが、泣き所は“運動”としてのみずほの村が広がらないこと。

3年前、外食・建設業の経営者6人とともに、フランチャイズを展開する会社を立ち上げた。が、いまだFCはゼロ。理由は明快、運営者は儲からないのだ。農家の手取りを第一義とし、中間マージンを極力圧縮するため、5・8億円の売り上げでみずほの利益は1000万円だ。

「みずほは儲けが目的じゃない。農家が何人、経営者になれたかが、オレの利益。意気に感じる経営者が出てくれば、FCは広がるよ」。

気掛かりは、むしろ、日本の食文化の衰退だ。「オクラのトゲでケガをした、とクレームが来る。与えられる文化に慣らされている。自分で調理し、創造する文化を忘れている」。消費者も、選んだ側の責任を取らなければ、農業は変わらない--。

木内は消費者=ユーザーの意向を導きの糸に疾走する。最新のターゲットは、完全人口光型の「植物工場」だ。木内にとっては必然である。

「絶対に食品事故を起こしてはいけない場所がある。一つは、ディズニーランド。もう一つは、国際線の機内食。両方とも千葉県でしょう」。

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