農業よ農民よ!経営者たれ 直売所革命vs「6次産業」化--木内博一・農事組合法人和郷園代表理事/長谷川久夫・農業法人みずほ代表取締役社長

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加熱商材のゴボウ、ニンジンなど根菜はまだしも、レタスなど葉物は完全無菌、絶対安全でなければならない。それには、外界から遮断し、人口光、空調完備、無農薬の植物工場だ。もし、無菌のレタスをよそが供給したら、やがて根菜類もそこが供給する。根菜は和郷園の稼ぎ頭の一つ。攻撃は最大の防御なのだ。

今や、みずほの村と和郷園の方向べクトルは必ずしも同じではない。が、完全な一致点がある。農家の戸別所得補償について、である。

「堕農(の政策)だよ」。長谷川はニベもない。最も手厚く保護されたコメがどうなったか。価格は10年で3割下落した。補償分だけ、足元を見透かされて価格がまた下がる。

木内の表現はより穏やかだ。「民主党は一方で、農業は産業化に向けた連携を考えよ、と言っている。それと戸別所得補償は相反する。つまり、戸別補償は暫定措置、ということでしょう」。自立の覚悟、経営者たらんとする決意がないかぎり、日本農業の生き残りはありえない、ということである。=敬称略=

きうち・ひろかず
1967年千葉県生まれ。85年匝瑳高校卒業、89年農業者大学校を卒業。91年産直を開始。98年和郷園設立。冷凍・加工、流通、海外生産も手掛け、「日本農業は技術も品質も、圧倒的に世界一」と言う

はせがわ・ひさお
1948年茨城県生まれ。66年谷田部農業高校卒業、68年に就農。90年みずほ設立。94年つくば市議会議長。農家による価格決定権の奪還、適地適作・適材適所の「日本型農業経営」の確立を唱える

(撮影:今井康一、代友尋 =週刊東洋経済 2010年1月30日号

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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