桜が散ってからまた咲くまで。これが日本人にとっての1年の定義だ。ここロサンゼルスでは桜は咲かないが、それでも年は巡る。風がないのに回っている風車のようで、僕のような新参者の日本人は違和感を覚える。
NASAジェット推進研究所(JPL)に転職してからもう1年近く経った。それはつまり、MIT留学からJPL転職までの体験をつづった本連載が終了してから約1年が経ったことも意味する。
この連載がありがたくも好評をただいたおかげで、このたび、著書『宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由』を刊行させていただくこととなった。これを機に本連載を一時復活させ、著書にも昨年の連載にも書けなかったいくつかのことを書きたい。
この記事では、この1年のJPLでの経験から学んだことについて書こうと思う。とはいえ、それは簡単なことではない。この春に入社2年目や学校の2年生となった人はおそらく同じ思いだと思うが、新しいことを始めた最初の1年というものは、まさに怒濤のごとく新たな経験をするものである。
僕もなんとかここで成功するために1年間必死にもがき続け、まだもがいている途中である。この体験を消化し、俯瞰的に眺め、そこから読者にとって有用な一般論を引き出せる段階には、まだ到っていない。
今回の著書はMITでの体験が主な内容だが、この1冊を書くために7年の経験と2年の消化期間を要した。MITのことだけではなく、JPLへの就職活動や職場の仕組みなど、JPLについても限定的な内容も含めはした。しかし、現在進行形で得ているこの怒濤のような経験を消化して1冊の本に著すまでには、少なくともあと5年ないし10年、もしかしたら20年以上かかるかもしれない。だから、JPLの体験について書けることは、現時点ではこの記事がすべてである。
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