ゼネコン工事凍結が「経済再開」に逆効果な理由 トランプ流「アメリカ再開」から学ぶべき勘所

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日本では、政府や役所だけでなく、国民一人ひとりが新型コロナと戦うという姿勢になっている。これに対してアメリカでは、トランプ大統領いわく「透明な敵」であるコロナウイルスと戦うのは、ヒーローとも呼ぶべき、医師、看護師、病院関係者など医療プロフェッショナルたちである、というスタンスである。

アメリカ市民がソーシャルディスタンシングを実行するのは、「透明な敵」と戦っているヒーローである医療プロフェッショナルたちをサポートするためである。日本とは、そのスタンスに違いがある。日本では、医療体制を国民全体がサポートするという意識が薄いのではないか。

日本国内における感染拡大の過程において、全国的に病院のクラスターが目立っている。コロナという「見えざる大敵」と戦っているヒーローである病院のスタッフ、さまざまな医療関係者にもっと寄り添い、きめ細かい支援をしていくべきだろう。時間に余裕のある若者たちが大災害時にみせるボランティア精神を発揮する、絶好のチャンスである。

そして、日本政府はこうした状況を踏まえて、何よりも医療機関への支援体制の強化に邁進すべきである。病院でのクラスター完全阻止こそが、いま安倍政権に最も求められている課題と言っていいだろう。

日本の経済再開はどう進めるべきか

日本では、大手建設会社が新型コロナ感染の事例を受けて工事を凍結するケースがニュースになっている。一方、アメリカでは、建設業が経済再開の旗振り役とされている。屋外での仕事が多いことから、ソーシャルディスタンシングを計画的に実行しやすいからだ。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、経済再開の手始めとして、まず建設業を挙げ、次いで製造業を挙げている。製造業の現場では、ロボットの活用も進んでおり、ソーシャルディスタンシングを計画しやすい点で、建設業と共通したところがある。

同氏は、教育の早期再開も提唱している。経済の早期再開には若者たちの間で強いニーズがあることに加え、「コロナ以後」には人間的な知性・感性の重要性がますます高まってくることから、教育の再開は早いほうがいい、というわけだ。

日本でも、少子化社会に対応して、マス教育ではない、少人数教育の方向で学校の再開を考えるタイミングではないか。パソコンや携帯電話を用いることなく、それでいて学生同士の社会的距離の確保を続けながら、直接交流することによる教育効果は高いと考えられるからだ。

今回の「アメリカ再開」ガイダンスに、日本が学ぶべきポイントはいろいろある。日本より圧倒的に多いコロナ感染者・入院患者・死亡者を抱えるアメリカだが、その苦い経験は、反面教師としての教訓も含め、参考にする価値が十分にあるはずだ。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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