ゼネコン工事凍結が「経済再開」に逆効果な理由 トランプ流「アメリカ再開」から学ぶべき勘所

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「レムデシビル」という開発薬品がシカゴ大学病院でコロナ患者に成果を出したというニュースである。この薬品はエボラ出血熱の治療薬として開発されたが、他の治療薬と比べた有効性を確立することができず、承認獲得に至らなかった。

くしくもガイダンス発表と同じ4月16日に、医療ニュースサイト「STAT」が明らかにしたのは、レムデシビルを新型コロナウイルス重症患者に投与したところ、高熱と呼吸器官系の症状が急速に回復し、多くの患者が1週間以内に無事退院したという事実だった。

実は、この薬品が有望だということは、3月18日、つまり約1カ月前の記者会見でトランプ大統領が言及していた。この会見に同席していたアンソニー・ファウチ医学博士は、トランプ大統領発言について、とかくおしゃべりが過ぎるという気持ちも手伝って、渋い顔をしてみせていたのが印象的だった。

有効性が期待されるレムデシビル

今回、このレムデシビルについて解説したのは、ファウチ博士ではなく、スティ―ブン・ハーン食品医薬品局(FDA)長官であった。同長官によると、レムデシビルは政府の「コンパショネート・ユース・プログラム」という形で利用可能になるという。

このプログラムは「生命にかかわる疾患などのケースで、代替療法がないような限界的状況では、国家未承認の開発薬でも人道的見地から使用できる枠組み」である。人道的に利用可能という点と、医療活動に関わるプロフェッショナルたちをサポートするという点を、トランプ大統領は重視しているのだろう。

“反トランプ”メディアは、トランプ大統領がその薬品の有効性に言及していたことを事前に承知していながら、その事実を報道していない。多くのメディアが犯しがちなのは、このレムデシビルを「アビガン」などと比較して、「どちらが勝つか」といった取り上げ方をすることである。

今後、治験の積み重ねや重症度などの症状によって、どの薬が効くかというデータも集められ、ゆくゆくは臨床医の判断、投薬のさまざまな手法も含めて、高度なノウハウが取得されていくことだろう。世界各国の高度な医学レベルによる協力も期待される。

ただその後、レムデシビルの有効性が疑問視される報道があり、「アメリカが再び開く」というガイダンスとレムデシビルの有効性との相乗効果によって一時的に急回復した株価も、その後、反落している。トランプ大統領としては、当てが外れたとは思いたくないに違いない。

その大統領も、新型コロナウイルスの新ワクチン開発については相当に時間がかかるとみている。だからこそ、開発薬のレムデシビルなどの治験結果が迅速かつ的確に公表されることが重要になる。それに伴って「アメリカ再開」ガイダンスによる各州の経済再開のスピードも加速されることになろう。

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