社会的距離を越えてコロナの時代と向き合う 世界の知性が問う今後の「グローバル経済」

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ソーシャル・ディスタンス=社会的距離。コロナ危機のさなか、にわかに浮上したキーワードだ。そして、それは、ポスト産業資本主義と呼ばれる、サービス、ソフトなどの第三次産業に関わる人々が多数を占める現代、その日常の働き方にも複雑な影を落とした。

「社会的」な「距離」は、結果、テレワーク、オンライン会議など、ネットを駆使し、距離を置いてつながる新たな行動様式を加速させる。しかし、そうした転換でしのげる人はよいが、もちろん、もっと切実な、ネットでは代替できない仕事を持つ人々のことを考えねばならない。

「優先事項は、最も脆弱な人々を助けることです。それも、その国の社会保障システムの性質にもよりますし、どの程度個人がギリギリの生活をしているかにもよります」

新実在論の旗手が語る「新自由主義の終焉」

「新型コロナウイルス(COVID-19)は現代の世界秩序の発展を根本から変えます。これまでの「モダニティ=近代性」の中で目の当たりにしてきたどの出来事とも異なります。私の予測では、われわれが現在目の当たりにしているのは、新自由主義の終焉です」

いきなり強い言葉で、大きな転換点であることを宣言したのは、マルクス・ガブリエルだ。彼はドイツの自宅のそばにある森で、現地クルーのカメラに答えてくれた。

「新自由主義は、連帯や国家、制度的組織の構造を、純粋な市場戦略によって支配されるシステムと置き換えることができる基本的経済概念でした。そして、そのシステムはまさにコロナウイルスに直面してひどく機能不全になるのです。

というのも生物学的な構造は経済的構造と完全に異なるモデルに依存するからです。ウイルスの論理は私が生物学的普遍主義と呼ぶところの概念の真実を浮かび上がらせます。生物学的普遍主義とは、ウイルスからすればすべての人や動物は平等であることを意味しています」

ウイルスこそが、現在の経済システムの「機能不全」をもたらすというガブリエルの指摘は、本質的だ。実際、隅々までシステマチックに整序された現代の都市は、テクノロジーの粋を極め、資本主義の原理を極限まで推し進めているかに見える。無駄がなく、隙がない、都市。

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