”聖地巡礼”とイベントを絡める戦略
話題のロケ地を“聖地巡礼”するファンが増えているが、イベントも絡めると訪問者はさらに増える。たとえば、下田を舞台にしたアニメ「夏色キセキ」では、 ラッピング列車の運行やスタンプラリーも実施した。さらに、伊豆急下田駅まで電車でやってきたファンに、1枚ずつキャラクターを描いたポストカードをプレゼントしたところ、配布枚数は1万2000枚を超えた。少なくともそれだけの人数が伊豆急を利用したことになる。
鉄道だけでなく、河津町内のロケ地を紹介するのも伊豆急の特徴だ。しかも撮影には多くの市民がボランティアとして協力している。河津町をはじめ全国各地の町おこし事業にアドバイスを行う地域活性プランニングの藤崎慎一社長は、「映画やドラマのロケ誘致は町おこしに有効。直接・間接的な経済効果だけでなく、地元の人が映像制作にかかわることを通じて、地域文化の創造につながる」と言う。映画『大人ドロップ』の公開に向けて、伊豆急では沿線のロケ地案内を作成している。“聖地巡礼”するファンが増えそうだ。
鉄道各社が競ってロケーションサービスに力を入れてくるようになれば、メディアへの露出が増えて鉄道会社にもメリットが大きいと思うのだが、実際にはそう単純ではない。
「ロケ誘致でいちばん大変な作業は社内調整」と、相鉄の和田課長は言う。最初はもの珍しさで協力してくれた各部署も、案件が増えてくると、だんだん作業を面倒くさがるようになってくるそうだ。確かに現場にとっては、安全の確保が最優先。撮影協力は余分な作業に違いない。それだけに「ロケ誘致のメリットをつねに見えるようにしておかないと、必ず文句を言う人が出てくる」(和田課長)。相鉄では、「ロケーション通信」というチラシを作って、撮影があるたび、社内に配布している。従業員や家族にロケーションサービスへの理解を深めてもらうためである。
かつてよくドラマに登場していたが、最近、見かける機会が減った鉄道会社がある。その理由は、撮影協力に対する社内の理解が得られなくなったせいかもしれない。ロケーションサービスに最も重要なのは、ロケ誘致を自社のイメージアップや集客につなげようとする担当者の熱意といえるだろう。

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