プロ野球選手は「クビ」にどれだけ備えているか 現役時代から準備し、引退後に即動けるかがカギ

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:現役でいかに未練を残さないかは重要ですよね。だから、現役時代にやり切ったと言える体験が必要。

高森:そういう意味で、「区切り」って必要ですよね。僕、引退試合なんてもちろんなかったですけど、石井琢朗さんが僕のために引退セレモニーやってくれたんです。自身のファンイベントで。僕、引退することに関して特別な感情なんて何もなかったのに、琢朗さんから花束もらったときに号泣しました。そこで、終われたって感じです。

2012年まで横浜DeNAベイスターズに在籍していた本記事の筆者である高森勇旗氏(撮影:梅谷秀司)

奥村:確かに、区切りはあったほうがいいですよね。一方的にクビって言われて、うやむやなまま引退していきますからね。俺の場合、藤川球児さん(阪神)や中谷仁さん(智弁和歌山高校監督)が食事会を開催してくれて、それが区切りのお別れ会でした。

高森:そういえば一度、プロゴルファーの人に言われたことがあります。「いいよな、プロ野球は。クビに”してもらえる”んだから。ゴルファーは、いつ辞めたらいいかわかんないよ」って。確かに、クビにしてもらえるという喜びもあるかもしれませんね。

奥村:あぁ〜、それは時々聞きますね。確かにそのとおりだと思います。区切りをつけるのは大切なことですね。

現在の心境

高森:水野さんは、まさにこれから社会に出ていくわけですが、今の心境は?

水野:本当に、不安半分、楽しさというか、頑張ろうという気持ち半分、という感じです。

奥村:不安って、具体的にどんな不安?

水野:やっぱりいちばんの不安は、金銭的な部分です。今までだったら、給料が振り込まれてくるじゃないですか。それが、12月を最後にいっさい振り込まれてこない。わかってはいますけど、実際にそうなると結構不安になりますね。

高森:あぁ〜、それは僕もすごく覚えてます。

水野:ので、一時はバイトもしてました。

高森奥村:バイト!? どんな!?

水野:いろんなマンションや家にチラシを入れたりとか……。

高森奥村:ポスティング!? そうなんですね!

水野:空いた時間を有効に使えたのと、社会勉強になると思って……。

高森:筒香(嘉智、横浜DeNA―レイズ)さんがポスティング(入札制度)してる裏で、水野さんもポスティングしてましたって、面白すぎますね!

一同:(大爆笑)

水野:やっぱり、プロ野球選手の金銭感覚ってちょっと違うと思いますし、そういう意味でも、一般的な感覚に自分の脳を慣らすという意味もありました。

奥村:それを、辞めてすぐ実践できるのがすごいですよね!

水野:なかなか大変でした。やはり、お金を稼ぐということの大変さを実感しました。

奥村:自分でそこまで考えられるなら、引退後のキャリア形成っていうのはすごくスムーズにいきますよね。こういう選手ばかりになれば、自然とプロ野球のセカンドキャリアの問題はなくなると思います。

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