森:現役中に、もっとこういうのあったらよかったのに、っていうことってありますか?
水野:寮生時代に、それこそ奥村さんのお金に関するセミナーとか受けさせてもらったのですが、僕は興味深く聞いてましたけど、選手によってはメンドくさいと思う人もいたかもしれません。何を与えられるかより、選手がどう能動的に動くかが重要だと思います。
高森:12球団全新人選手に向けた研修ってあるじゃないですか。ああいうのって、ほかのスポーツだとどれくらいやってるんですか?
森:プロ野球は1日で終わるけど、Jリーグは3日間くらいやってます。シーズンの関係もあって、全員を集めることは難しいですが、もっと情報には触れたほうがいいとは思います。
奥村:1年に1回、それも1日に詰め込んでやるには、情報量にも記憶にも限界がありますからね。税金の話も、1年目よりも2年目にやらないと実感がないし。継続性が大事だと思います。
高森:3年くらいやったほうがいいと思いますよ。3年目あたりに、「そろそろクビを考えているあなたへ」みたいな研修(笑)
一同:(爆笑)
奥村:確かに、3年もいればそろそろわかりますからね。
水野:OBの話を聞くと言っても、なるべく年齢が近い人のほうがいいと思うんですよね。例えば、昨年まで現役だった人で、社会に出ている人の話を聞くとか。選手もその人のことを知っているだけに、ものすごくリアリティーがあります。そういう機会はないですよね。
森:確かに、それはないですね。すごくいいアイデア。
学生時代から、人間形成をつねに意識しておく
奥村:今、目線が現役選手に向いてますが、むしろ学生時代に意識しておくべきことっていうのは何がありますか?
高森:ちゃんと勉強もしておいたほうがいい、という見方もありますけど、僕はあえてそれを言わないようにしてます。野球でプロに行こうっていう学生の多くは、野球に全精力を傾けていますから、勉強なんて知ったこっちゃないでしょう。だから、「勉強もやっておいたほうがいい」というメッセージが響くはずがない。でも、これだけはやっておいてほしいのが、「人の目を見て話を聞く」「感謝の気持ちを必ず伝える」ということです。この辺りは、社会に出て究極の汎用性を持ちますから。
奥村:僕は、もっと考えて練習しておけばよかったなと思ってます。「何のためにこの練習をやってるんだっけ?」って考えるだけで、思考するトレーニングになる。仕事ってそうじゃないですか。つねに目的意識を持って日々行動していくわけなので。
森:つねに相手の立場に立って考える、ということもトレーニングしておくといいですね。「何でこれを言われているのか」「何で今これをやっているのか」。そうやって考える癖がつくと、社会に出ても役に立つ。
奥村:勉強ができるできないというよりも、「野球を通してどういう人間になるか」という人間形成をつねに意識しておく、ということが、最大の備えになりますね。
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対談を通して得たことは、現役時代から多くの情報に触れているかどうか、また、引退後にどれだけ自分が行動を起こせるかが鍵を握るということだった。次回、最終回となる第5回では、筆者である私から、自身の経験も交えて連載のまとめを書かせていただく。
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