プロ野球選手は「クビ」にどれだけ備えているか 現役時代から準備し、引退後に即動けるかがカギ

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高森:僕は2012年にクビになったんですが、だいたい夏を過ぎると「あ、今年でクビだな」ってわかりますよね。それで、次の世界に向けて準備したいんだけど、「それをやっちゃあおしまいよ」みたいな空気があったんです。水野さんのケースでも、そんな感じでしたか?

水野:確かに、そういう空気はあったかもしれないですが、僕の場合はやはり早めに決めていた分、行動は起こしやすかったですね。

奥村:僕のときは今と違って、「セカンドキャリアを支援しよう」という空気が世の中的にもまだ整備されていませんでした。今は、いろんな機会を球団や選手会が用意したり、こうして情報発信も行われていたりしますけど、そういう情報って選手はどれくらいキャッチアップできているものなんでしょうか?

水野:そういう情報があるっていうのはなんとなくわかってはいましたけど、自分から調べる選手というのはかなり少ないんじゃないかと思います。

:個々によりますよね。ベテラン選手になればいいかもしれませんが、若い選手からすると、わかっていてもそこに目を向けたくないなっていうのはあると思います。そんなこと考えるより、現役時代に集中しようって。

プロ野球選手会事務局長の森忠仁氏(撮影:梅谷秀司)

高森:これって、結構根深い問題だと思うんです。危ないなとわかっていながら、そこに目を向けてしまうと、敗北を認めてしまう、みたいな。

奥村:あー、確かに。それはありますね。

:毎年誰かがクビになるので、そのたびに現役選手は向き合うはずなんですよね。だから、毎年考える機会はある。

奥村:向き合うんですけど、やはり自分ごとになっていないですよね。「自分はクビになるわけない」って思いますから。僕も、そう思っていましたし。

高森:それが、ある日突然自分ごとになる。

奥村:そう。ある日突然、ね(笑)。

サードキャリア

高森:今、辞めたプロ野球選手の50%がなんらかの形で球団に残るそうです。でもそれは、社会に出るのを遅らせているだけという見方もできると、森さんは指摘されていますね。なぜなら、翌年も50%は球団に残るから。そうすると、必然的に誰かは社会に出ていかなければならない。

奥村:まさに、そこも大きな問題ですよね。今、引退した選手に向けたキャリア支援は出来上がりつつありますけど、球団職員を経て社会に出ていく、言うなればサードキャリアには目を向けられていない。実はここは結構重要な問題で、実態も把握できていないんじゃないかと思います。球団の裏方さんのほうが、選手よりも次のキャリアを考える時間も気持ち的な余裕もある。だから、引退後のキャリア支援はむしろサードキャリアの方々にとって重要だと思います。

:選手のみならず、球界全体として取り組んでいかなければならないですね。球団に残った人に対して、どういう経緯で球団に残ったのか、今どんなことを考えているのか、いろいろ聞いてみる価値がありそうですね。

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