「ユーラシア大陸」の復活が世界を大きく変える 中国を筆頭に地域で起きている再連結

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──内向きになるアメリカは、中国に圧倒されるしかないのでしょうか。

そうは思わない。アメリカには中国に勝るものが3つある。食料、エネルギー、そしてテクノロジーだ。

人口が多く輸入に依存する中国の食料問題はアメリカより厳しい。その傾向はますます強まるかもしれない。エネルギーも同じで、経済発展に伴い輸入が増える。2030年までに中国は石油消費量の7〜8割を輸入するようになる見通しだ。一方でアメリカではシェールガスの生産が増え、その輸出国になる。

日本は部分的に一帯一路に協力すべき

テクノロジーについては、中国に特定の分野で競争力があるのは間違いない。ビッグデータの収集や利用に中国の体制は有利かもしれないが、全体としてはテクノロジーでのアメリカの優位は続くだろう。アメリカにはシリコンバレーのような、テクノロジー開発に資金を融通するためのエコシステムが確立されている。知的財産が保護されていることもプラスだ。

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これら3つに加えて、人口動態の違いもある。アメリカは移民が流入するため若年人口が増えていく。中国は逆で、2030年代以降に高齢化が深刻になる。

ユーラシアのスーパー大陸化は中国に追い風だが、中国が第2次大戦後のアメリカのような圧倒的に強い力を持つとは思わない。

──スーパー大陸を背景にする中国に、日本はどう向き合うべきでしょうか。

習近平国家主席が近く訪日する一方、アメリカのトランプ政権の外交方針は予想しにくい。こういう状況下で日本は中国との関係を安定させる必要がある。その意味で、日本は部分的に一帯一路に協力する必要があるだろう。しかし、長期的にみれば日中の国益はかなり異なることを忘れてはいけない。

ユーラシアの再連結は中国に有利になるので注意したほうがいい。日本にとって大事なのは、スーパー大陸を中国一極ではない多元的な構造にすることだ。

日本とEUとの協力も重要だ。アメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から撤退したタイミングで日本とEUのEPA(経済連携協定)が結ばれたのはよかった。日本は一帯一路とは別の枠組みで、バルト諸国や中央アジアなどに関与するとよい。そのためにEUと連携するのも選択肢の1つだ。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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