大手スーパーが「キャッシュレス」に怯えるわけ ライフ社長「ポイント還元制度は不公平だ」

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――アマゾンと組んで始めた生鮮食品のオンライン販売は、順調ですか。

アマゾンとの協業は9月から始めた。最初の1カ月で当初想定していた半年間程度のオーダーがあり、週末にはキャパオーバーになることもある。年間ベースで見ると、店舗売り上げのうち1割ぐらいはアマゾンとの協業事業が占めるようになるのではないか。

総菜などすぐに食べられるもの、「即食」関連の需要が多い。「ビールとおつまみだけ。送料がかかってもよい。すぐもってきて」という顧客もいた。ライフも単独でネットスーパーを運営しているが、アマゾンとでは顧客の層が明らかに違う。普段とは違う層に利用していただけている。

配送エリアは板橋区、練馬区など都内7区から始めたが、2020年度は順次拡大する。できるだけ早い段階で東京23区をカバーできるようにし、大阪でも2020年の早い段階で展開できるようにアマゾンと協議したい。

採算厳しいネットスーパーの店舗は整理を検討

――ライフが単独で運営しているネットスーパーの状況は? 売上高は2019年度は30億円の見込みで、2021年度に100億円を目標にしています。

ネットスーパーについては約50店舗で進めているが、2019年度は対象店舗を拡大しない方針だった。既存店強化に集中した結果、黒字化する店舗が増えてきて、現段階では20店舗ぐらいが黒字になる見込み。

2020年度も、ネットスーパーの新店は2~3店舗程度にとどめて、既存店の質を高めていく。どうしても採算確保が難しい店は、周りの店とのバランスを考えながら整理も検討していく。

――GMS(総合スーパー)最大手のイオンがイギリスのネットスーパー専業オカドと提携し、事業強化を宣言しました。

イオンとオカドとの提携については、他社のことなのでノーコメント。ただ、競争になる。イオンはネットスーパーの売上高を6000億円にする目標を掲げた。われわれにはとても出せる数字ではない。だが、なんとかアマゾンとの協業で事業を拡大していきたい。

――人件費高騰やコンビニ、ドラッグストアとの競争激化など、スーパーを取り巻く環境は厳しくなるばかりです。

パートやアルバイトの時給は年間10~20円ずつ上がっている。2020年度も同じように上がっていくだろう。打つべき対策には取り組んでいるが、効率化などを一段と徹底したい。ここ3年ぐらいプロセスセンター(食品などの加工センター)を増強し、そこでの加工作業を増やすことで、店舗内での作業負担を減らしている。場合によっては営業時間の見直しも考えないといけない。

ドラッグストアはあまり意識していなかったが、店舗数が増えてきて、少なからず影響が出てきた。ライフは日用品もそろえ、EDLP(毎日低価格)の強化をしており、ドラッグストアに負けていない。ワンストップで買ってもらうことができるので、対抗できる余地はある。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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