IPOブームの影で人気化する、ある人材 勤務先の会社が上場。面倒で不運?それとも幸運?

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確かに、

・政府系企業

・歴史のある伝統的製造業

といった、「数年前なら上場など考えられない」と思われた会社が、上場の準備に入っています。上場を決断した背景は、グローバル化や大型の資金調達の必要性などさまざまですが、

「非上場で安定感に魅力を感じて入社したので、将来が不安で仕方ない」

と、会社の上場をネガティブに考えている人たちも少なくないようです。ちなみに上場を目指す状態になると、職場で何か変化は生まれるのでしょうか?

あの人材も、この人材も足りない……

これまでに会社の上場をリアルに経験した職場の体験談を何人かに取材してみました。すると、上場準備に入ると就業規則や社内ルールの再整備、厳格化が進むのは間違いないようです。上場審査をクリアするため証券会社と監査法人が準備を進めますが、

・内部監査室を設置

・コンプライアンス(法令順守)強化のための研修の実施

などが行われます。あるいは何事も書類上に残す必要があるので、稟議書や予算管理表など、事細かな事務作業が増えます。現場で働く立場にすると、これまでより「住みにくいな……」と感じたり、監視されているような環境と感じるかもしれません。取材した中で、

「こんなに仕事がやりづらい状況になるのなら、上場なんてしてほしくない」

と、役員に直接文句を伝えた人がいました。ただ、そんな気持ちに対して会社は、「会社が大きくなるために必要な生みの苦しみ。我慢してくれ」と回答したようです。

一方で経営陣は上場による資金調達で、どのような新規事業を行うか、あるいは上場後に内部管理体制を維持するためにはどうしたらいいかなど、社員のあずかり知らないところで忙殺されています。ただ、その忙殺を被る職場では、社員たちの不満が増幅することもあるようです。上場準備の際に、人事部で勤務していたFさんは

「中途採用で管理部門の人材を早急に採用しよう。監査法人から組織上の牽制機能は働いていないと指摘があった」

と管理部門の人材採用について、指示を経営から受けました。牽制機能とは、日常業務に内部牽制機能を持たせ、不正やミスが生じない体制を整え、会社の利益を流出させないようにすることです。

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