「働かないオジサン」は40にして惑いっぱなし 「このままか、辞めるか」という二者択一は危険信号

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まずは、会社との関係を見つめ直せ

こういう追い込まれた状態の時には、あらためて自分を深めるタイミングなのだ。

40歳での揺らぎは、自分と自分が働く会社との関係から生じているのであるから、そこを起点にしなければならない。

働くことによって得たもの、失ったもの、出会った人、そこでの仕事の向き不向き、自分に対する会社の評価などを確認しながら、まずは自分と会社との関係を徹底的に見つめ直すことだ。

この作業には、一定の時間が必要であるし、自分ひとりで取り組まないといけない。そういう意味では孤独な作業になる。

科学者のアインシュタインは、「われわれが直面する重大な問題というものは、その問題を引き起こしたときと同じレベルの思考では解決できない」という言葉を残している。まずは、自分と組織との関係を客観視できなければならない。会社という枠組みを理解することからしか、問題を解決するヒントは生まれないからだ。この揺らぎを次のステップに転化させた人の具体例は、後の機会に紹介することとしたい。

先ほどの「四十にして惑わず」には、異説があって、孔子がこの発言をした当時は、「心」という概念がまだなく、本当は、「惑」ではなく、「或」の文字だったという説があるらしい。「域」「國」は、「ある特定の範囲」という意味なので、この「四十にして惑わず」は、「従来からの自分の枠組みの中にとどまっていてはいけない」と解釈するという説を聞いたことがある。

辞書や書籍をいくつかあたったが、この説を裏付けられるものは得られなかった。しかしこのように解釈すれば、「吾れ十有五にして」から「七十にして矩を踰えず」の人生の流れがスムースに読めるとともに、孔子自身の経歴とも一致するのである。

ブレイクスルー、つまり壁を突き破り(現状を打破し)、一歩前進することが求められていると読めるのである。

楠木 新 人事コンサルタント

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くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

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