「J-REITは上がる」と信じる人がハマる落とし穴 「リスクが低い」と思っているなら大間違いだ

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過去のデータを使うと、Jリートは株式と同様、比較的値動きの大きい「ハイリスク・ハイリターン」商品に分類されているのですが、投資家は分配金の高さなどから値動きに安定感があると思い込み、リスク許容度を超えて過剰に投資してしまいがちです。そのため、Jリートの下落の動きが強まると、びっくりして、投げ売り(過剰にとったリスクの修正の動き)が加速することも考えられます。

今後のJリート投資には慎重さが必要だ

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また、投資家は分散投資の観点から、株式とJリートは逆相関(値動きが逆となる)の商品と安心しきっており、リスクを過剰にとっている可能性もあります。

2006~2007年前半の不動産バブル(Jリートの急騰)と2007年後半~2008年のリーマンショック(Jリートの急落)を経験した投資家からは、「上昇相場では、株式と逆相関の分散投資対象として思われていたJリートは、下落相場では、過去のデータ以上に相関が高まり、株式と同方向に急落し、被害を拡大させてしまった」との話をよく聞きます。

分散投資の視点から、株式と逆相関の商品と思い込んでJリートを買った投資家は、一度、株価と同時にJリートの価格が下がり出すと、これまたびっくりして、投げ売りを加速させることも考えられます。

このようなJリートに対してバイアスのかかった投資家が多ければ、多いほど、価格が下落しだすと売りが売りを呼ぶハーディング(群れ行動)が生じ、Jリートは想定以上に急落してしまうこともあり得るでしょう。

以上の点を踏まえれば、今後のJリート投資では、東京都心5区の空室率が今後、数カ月の間に反転の兆しを見せないかどうか、グローバルで長期金利が反転しないかどうか、また日本株が再度下落することにより、投資家のJリートに対する過剰にとったリスク修正の動きから投げ売りが広がらないかどうかに注意が必要でしょう。そうした点では、ここからのJリート投資はいったん慎重になりつつ、利益を確保し、次の投資のタイミングや他の資産への乗り換えを検討することも大事な局面だと考えています。

中村 貴司 東海東京調査センター 主任調査役 シニアストラテジスト

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なかむら たかし / Takashi Nakamura

日系、外資系証券、損保・証券系運用会社でアナリスト、ファンドマネージャー等を経て現職。ファンダメンタルズ分析にテクニカル分析や行動ファイナンス理論を組み合わせた投資戦略、市場分析を重視。国際公認投資アナリスト(CIIA)、CFP、国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)。日経CNBC等での出演のほか。日経新聞、QUICKなどでもコメント・執筆。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター「ファンドマネジメント講座」などで講師を務める。

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