役所の無責任・非効率に憤る30歳公務員の嘆き 「安月給」「長時間労働」「クレーム」の三重苦

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例外的に、気温が35℃を上回ったときだけ冷房の使用が許可されるが、「35℃を超えた時点」でしか申請ができないシステムとなっており、なおかつ許可が下りるまでタイムラグがあるので、すぐに冷房が使えるわけではない。申請から2〜3時間経って、ようやく冷房がオンになるということも多い。当然、そんな過酷な環境下では、残業中に熱中症で倒れる人も続出する。

藤田さんは「これが大活躍してます」と、私に電池式のミニ扇風機を見せてくれた。ないよりはマシ、なのかもしれないが、室温が高い中でミニ扇風機を使用しても生ぬるい風に当たることしかできず、きっと気休め程度にしかならないだろう。

保冷剤を扇風機に取り付けて空気を冷やすという手も思いついたが、そもそも保冷剤を冷やしておける設備もないので、これは使えなさそうだ。職員がこのような環境で働かざるをえない背景には、「厳しい市民の目」があった。

市役所などの行政機関には、市民から「どこにいくら税金が使われているのか」を問われた際に、開示する義務がある。電気代1つを取っても「今月は電気を○Kw(キロワット)使用した」と説明する必要があるため、市民に「税金の無駄遣いだ」と言われかねない使い方はできない。だからこそ、上層部は残業時に空調設備を使用することを嫌がるというわけだ。

「俺たちが払っている税金で…」

そこまでしなくても、と思うが、実際にこうしたクレームを入れる市民は存在するようだ。

藤田さんは「年齢で人をくくることはできないと思うのですが」と前置きをしたうえで、「俺たちが払っている税金で……」という内容の苦情は40代以上の人から寄せられることが圧倒的に多い、と話した。

藤田さんは業務上、窓口ではなく訪問先での対応がほとんどであるため、作業中に「どうせ涼しいところで仕事しているんだろう」「大した仕事してないくせに」などといった言葉を投げかけられることも多い。どんなに腹が立っても、怒ることはできない。

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