30歳までに転職しないといけない、というワナ 【特別対談】神原一光×太田彩子(2)

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太田 一般的には「5年間、1万時間で一人前」という法則があるじゃないですか。でも神原さんの場合、もう少し長い1万4000時間の法則ですね。

神原 これは、NHKならではの法則かもしれないですけどね。新卒が入局すると、まず地方に5年くらい行くので、その分、長くなるのかもしれません。

太田 私自身、起業して5年でやっと落ち着きました。友人の経営者を見ていても、起業後5年以降の人は、安定感をもって経営できるようになると感じます。だから本領を発揮できるようになるのです。それまでは自分の強みがわからなかったり、本来、進むべき方向とは違うところに手を出して右往左往しがちですが、だいたい5年を経て、自分が戦うべきホームがどこにあるのかわかってきます。

神原 新卒から5年だと、28歳くらいですか。

太田 特に女性の28歳は、転職だけでなくライフイベントを迎える真っ盛りの時期でもあります。30歳目前になると、周囲に結婚がものすごく増えるんですよ。毎週のように他人の結婚式ばっかり行って、私どうなるんだろうって焦ったりする。

神原 ちょうど仕事も面白くなってくる頃ですよね。

太田 そう。ただ、今まで右肩上がりでがむしゃらにやってきたけど、私このままなのかなって、見えない不安に襲われる人もいます。一方で、深く考えずに「自分はこれしかないんだ」って猛進する人と、二極化していますね。特に女性の生き方やライフプランは女性の社会進出によって選択肢が増えすぎてしまった結果、自分の意思をしっかり持っていないと、流されてしまいます。

新人が「ワーク・ライフ・バランス」!?

神原 確かに28歳は、男女ともに迷う年齢です。でも、だからこそ、せめてその年までは「ワーク・ライフ・バランス」なんて言わないで、全力で仕事したほうがいいと思うんですけどね。

太田 そう、そのとおり!

神原 もちろんブラック企業的な働き方をさせられていたら別の話ですが、「ワーク・ライフ・バランス」というのは、基本的には入社10年目以上くらいの社員が言うことであって、若手が言い出すことではないのではないでしょうか。

内閣府の「ワーク・ライフ・バランス」の定義をよく読みますと、こうです。

「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」
内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室

ここに「仕事上の責任」という言葉があるんですが、この意味は、まずは与えられた仕事を自主的に、自立的に完結することだと思うのです。それが20代の最初のハードルですよ。それができたうえで両立が必要だというならわかるんですけど。

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