伝説の怪奇漫画家が歩んできた退屈しない人生 73歳の今もなお新作の制作に意欲を燃やす

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精力的に作品制作を続けたが、2000年代になりホラー雑誌がなくなってきた。

日野さんはパソコンを使ってデジタルで作品を作りたいなという思いもあり、52~53歳の頃にいったんペンを止めた。

2005年からは大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科で教鞭をとるようになった。現在も定期的に大阪に通い、講義を行っている。大学の給与をメインの収入にして生活して、作者としては15年ほどあまり作品を製作していなかった。

「伝説の怪奇漫画家」の復活

そんな2018年、日野さんは急に活動を再開した。

銚子電鉄の応援商品として発売された「まずい棒」のために「まずえもん(魔図衛門)」というキャラクターを描き下ろした。それはSNSなどで話題になり、10カ月で100万本以上売り上げるヒット商品になった。

また個展を開催したり、ラジオなどに出演したりと活発に活動しはじめた。

自身でツイッターをはじめて、近況を定期的に報告している。

長らく「伝説の怪奇漫画家」という立場になっていたが、健在であることをアピールした。そして久しぶりに描き下ろした新作が、絵本『ようかい でるでるばあ!!』だ。

『ようかい でるでるばあ!!』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「15年ぶりに作品を描きました。大学の春休みに合わせて集中して作ることができました。作家のスイッチ・オンにして作業をしてみて『俺ってまだ描けるんだ!!』って思いました」

絵本は日野さんにとって20年来の念願だったという。

「先日亡くなってしまったモンキー・パンチさんにも『絵本合うんじゃない?』とずっと言われていたんですね。

子どもの頃に大好きだった杉浦茂漫画のテイストを思い出しながら描きました。こういう作品をずっと作りたかったんですよね。そもそも『ドロドログチャグチャ』の漫画を描く予定じゃなかったので(笑)。

こうやって形になって、手にとってみると感慨深いですね」

と日野さんは愛しそうに自らの絵本をめくっていた。

「絵本のアイデアはまだまだたくさんあります。今回は『妖怪』をテーマにした、元々の日野日出志のイメージと近い作品でしたけど、恐怖からはかけはなれた作品も作りたいと思ってます。例えば『進化』をテーマにした作品を作ってみたいですね。

振り返ってみると、本当に退屈しない人生です」

小学校の頃から読んでいた、伝説の怪奇作家が現在も新作制作に意欲を燃やしている姿を見ることができて本当にうれしかった。

次にどのような作品が発表されるのか、心から楽しみにしている。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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