新社長は"大穴"?新日鉄住金が社長交代発表 決め手は調整能力、社内融和を進められるか

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過去3代は営業担当から昇格

調整能力が買われた進藤次期社長

宗岡会長は2008年から新日鉄の、友野社長は2005年から住金のトップをそれぞれ務めており、社長交代は時間の問題と考えられた。ただ、進藤氏は本命とは見られていなかった。

宗岡会長(社長在任2008~2012年)、三村明夫・相談役名誉会長(同2003~2008年)、故・千速晃氏(同1998~2003年)と、旧新日鉄の社長は3代続けて営業担当の副社長が昇格していた。今後も海外での事業展開を加速させる必要があることから、薄板の営業と海外戦略を担当する樋口眞哉副社長が最有力視されていた。

ある業界関係者は「調整能力に長け、経営統合に貢献した進藤氏が社長に就任することのメッセージは“社内の融和”。旧住金出身者に配慮したのだろう」と推測する。

一方、株式市場からは「旧新日鉄出身の社長になって改革が進むと株価も跳ねたが、出されたメッセージから経営方針の大きな変更は読み取れない」との声が聞かれた。確かに、就任会見で既存路線の踏襲を掲げた進藤氏の経営方針は新鮮みに欠ける。株価も期待感から前場はジリ高だったが、後場に入ると上げ幅を縮め、終値は342円と前日比3円高にとどまった。

いずれにしても、進藤次期社長は経営統合の深化に加え、国内製造工程のコスト削減、海外への積極展開という重責を担う。海の向こうのライバル、韓国ポスコも1月16日、次期CEOとして、技術部門を統括する権五俊(クワン・オウジュン)社長を内定した。権氏は1950年生まれで、ソウル大学を経て、米ピッツバーク大学で金属工学の博士号を取得した技術者だ。

管理畑を歩んできた人物をトップに選んだ新日鉄住金と、技術者を新CEOに据えるポスコ。偶然なのか、必然なのか。対極にあるルートから同じ日にトップを内定した両社は、今後も熾烈な競争を繰り広げることになる。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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