靖国参拝は日本の戦略的利益にとって無意味 ダニエル・スナイダー氏に聞く

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ダニエル·スナイダー氏は、スタンフォード大学のショレンスタイン アジア太平洋研究センターの副所長だ。彼は、以前にクリスチャン·サイエンス·モニターの東京とモスクワの支局長を勤め、サンノゼマーキュリーニュースの外交政策担当編集者兼コラムニストでもあった。スナイダー氏は現在、東アジアの歴史記憶の形成に関する3年間の比較研究活動である「ナショナリズムと地域主義、分断された記憶と和解」プロジェクトを指揮している。彼自身の研究では、アジアにおける米国の最近の外交·安全保障政策と、日本と韓国の外交政策に焦点を当てている。同氏に、安倍首相の靖国参拝の影響について聞いた。
当インタビューは、週刊東洋経済1月18日号(14日発売)の核心リポート01「中韓に加え米国も圧力、靖国参拝後の神経戦」の関連記事です。
 
 
ダニエル・スナイダー氏 (スタンフォード大学・ショレンスタインアジア太平洋研究センター副所長)

--靖国神社を訪問する安倍首相の動機は何なのでしょうか。イデオロギー的信念なのか、あるいは自らの支持基盤の保守層との連携を強化するためなのでしょうか?

「安倍首相にとって、これは個人的な信念の問題だと強く確信している。彼は繰り返しそのように述べてもいる。安倍首相は、最初の就任期間中に靖国参拝を行わなかったことを非常に後悔していると語ったことがあった。彼は靖国参拝が自身にとって重要なことであることを明確にしたのだ。

 靖国参拝は安倍首相の信念なのだろう

靖国神社参拝は、日本の誇りと愛国心の復活という安倍首相の信念の一部だ。これは、戦争についての彼の思想的信念の一部であり、戦後レジームの正当性についての彼の見解でもある。彼は東京裁判や連合国の占領に関連したその他の調査結果を否定している。彼にとってこれが個人的な信念の問題であることは疑いようがない」

--法律上 、靖国神社は民間団体です。とりわけ隣接する宝物館(遊就館)から判断すると、靖国神社は歴史的「修正主義」の視点に固執する民族主義団体の影響を受けているように思われる。安倍首相の考え方は、この種の団体とどの程度近いのでしょうか。

「これは日本の戦後の保守的な思想の進化の一部であり、複雑ではあるが、いくつかの一般化で要約できる。一部の指導者は完全に米国に支配され、西洋のシステムに組み込まれたものとして、日本の未来を見た。彼らは基本的に、戦後日本の安全保障の重要性を軽視した戦略的決断を下し、その代わりに、国力と世界経済における地位、経済的手腕、そして資本主義発展のモデルとして他国にアピールする能力を重視した。それは、「吉田ドクトリン」の下に定着し、戦後、多くの首相がこのような考え方を示してきた。

そしてまた、米国との同盟関係が重要であるという意味で、戦後秩序の中核的な信念を受け入れた、さらに民族主義的な視点があった。これはつまり、日本は戦前の姿に戻ろうとしているのではないという考え方だが、多くの面で、日本のリベラルな国際主義的なビジョンを否定するものだった。このような考えを持った人々は、日本が明確な文化的アイデンティティと国家の誇りに基づく国家となることを望み、そして戦後秩序を、多くの点で日本の独立性を奪うものであると考えました。彼らは、防衛·安全保障分野での独立と実行力を含め、失われた日本の主権を回復したいと考えてきた。

大きく分けてこれら2つの枠組みがあり、安倍氏は後者に当てはまる。安倍氏が尊敬する祖父・岸信介もまた同じ考え方を持った政治家だった。本当の問題は、日米同盟に賛成であるかということではない。結局、岸氏は安保条約の改正を強行した。問題は、日本が世界秩序にどのように適合するかということであり、日本が永久に米国に従属することを望まないということなのだ」

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