「色あせない卒業アルバム」を作りませんか ドコモの支援プログラムに集まるスタートアップ②

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思い立った太田社長は大手IT企業のエンジニアだった妻の祐子氏を説得してアルバムアプリの開発に取りかかった。「電子アルバムを作り、データをクラウド上に保存すれば、災害などで端末を紛失しても思い出を守れる」。そう考えた太田社長が手掛けたのは、オーダーメイドの家庭用のアルバムだった。

「家族の思い出を電子アルバムで守りませんか!」--約半年間、街頭でビラを配ってアピールしたものの、受注できたアルバムはわずかに18家族分。「災害への備えを訴えるだけではユーザーにあまり響かず、利用してもらえなかった」。苦い経験だった。

そこで大きく方針を転換する。きっかけは、ある写真館の経営者との雑談。予算の都合で紙のアルバムを作れない学校が増えている、親御さんから不満の声が出ないように、小さい写真を敷きつめただけのアルバムが増えている、といった話を聞いた。電子アルバムであれば、こうした課題を一気に解決できる。卒業アルバムサービスとして出直すことを決めた。

ドコモとの連携で端末も

収益モデルとしては、フォトブック作成時の課金などを検討中。だが、全体像は未定だ。価格設定も含めて、イノベーションビレッジのメンターやチューターと議論を進めているところだ。

課題は、スマホやタブレットを持っていない親御さんや卒業生も多い、ということだろう。端末を全員が持っていなければ、学校としても導入をしにくいだろう。この問題点を、太田社長はドコモとの連携で解決する道を探っている。「端末があれば、電子アルバムとセット提案できる。そうすれば、採用してもらいやすくなる」(太田社長)。

太田社長は多くのビジネスプランを語る。「卒業アルバムだけでなく、スマホ内、SNS投稿写真を自動的に取り込んでアルバムを作れるようにしたい」「将来は、同じ1枚の写真に写っていれば、それだけで繋がるコミュニケーションツールにする」――。こうしたプランを実現していくためにも、まずは卒業アルバムでの実績作りが重要になる。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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