北海道夕張支線、二度と響くことのない警笛 「攻めの廃線」は各地でモデルケースとなるか

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JR北海道が「単独では維持困難」と表明している13線区のうち、実際に廃止・バス転換されたのは夕張支線が初めてだ。

最終日のセレモニーであいさつするJR北海道の島田修社長(記者撮影)

同社は夕張支線のほか4線区について廃止・バス転換の方針を示しているが、地元自治体と合意しているのは、昨年12月に2020年5月7日の廃止が決まった札沼線(学園都市線)の北海道医療大学―新十津川間47.6kmのみだ。

同社の島田修社長は3月31日午後に夕張駅前で開かれたセレモニーの後、報道陣の取材に対し「夕張で始まる新しい交通体系が地域活性化のモデルとなり、他地域の方々にも見に来ていただけるようなものを実現していかなければならないと思っている」と述べた。

そのうえで、ほかの維持困難線区について「元号も変わる新しい時代に合わせ、1線ずつしっかりご理解いただき前へと進めていきたい」と話し、各線区の地元との話し合いを加速させたい意向を示した。

地方交通をどう維持するか

4月7日投開票の北海道知事選でも、JRの路線見直し問題は争点の1つだ。自民、公明両党が推す候補者で「攻めの廃線」を提言した前夕張市長の鈴木直道氏は「地域の実情や市町村の意見などを踏まえ、関係機関による検討・協議を早急に進める」と表明。野党統一候補である元衆院議員の石川知裕氏は「廃止を前提とするのではなく鉄路を生かす方向でさらに検討する」との方針を掲げる。

夕張支線の廃止翌日、夕張駅近くのバス停に到着するバス(記者撮影)

北海道だけでなく、地方公共交通の維持は全国的に厳しい状況に追い込まれている。3月下旬にJR四国が発表した線区別の収支は、瀬戸大橋を渡る本四備讃線を除く全線区が赤字との内容だった。

路線バスの維持は今や全国的に困難となり、都市部であっても乗務員不足による減便などが進む。単なる「赤字鉄道のバス転換」はもはや成り立たず、公共交通全体を見据えた再編が必要不可欠だ。

平成最後の廃線となった夕張支線は「今後のモデルケース」となっていくのだろうか。鉄道だけでなく地方交通全般をどう維持するか、「令和」の時代に本格的に問われるのは間違いない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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