ハーバードで1番人気の国は、日本? ジャパンパッシングから、熱狂的な日本ファンへ

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名古屋駅の新幹線ホームで、修学旅行中と思われる小学生が先生の指示どおりに静かに体育座りで整列して待っていた。日本では当たり前の光景だが、アメリカ人からすると、小さな子供たちがきちんと整列しているのが信じられないようだ。公共の交通機関は秒単位で正確に動くし、街中にはほとんどゴミが落ちていない。大抵のお店で店員は笑顔で迎えてくれ、日本語がわからなくても丁寧に応対してくれる。

電車移動中のハーバード生。日本人の交通機関でのマナーの良さも驚嘆されるポイントだ

そんな秩序、調和、礼儀を重んじる日本の和の心に触れ、彼らは深く感動する。

あるHBS生が、京都の街中で携帯電話をなくした。本人は大慌てだったが、そのうち心優しい誰かが拾って連絡をくれ、無事に手元に取り戻すことができたこともあった。

街中に自動販売機があるのを見たブラジル出身のHBS生は「これがリオデジャネイロだったら、夜中に機械ごと持って行かれるね」と笑っていた。私も以前、東京で財布を落としたことがあったが、中の現金そっくりそのまま交番に届けられていた、という話をすると、彼らは「そんな国が地球上にあると思わなかった」と驚く。

日本人の誠実さ、安全性は、世界に誇るものがある。

また、浅草寺からスカイツリーを見上げ、歴史と未来が隣合わせであることに驚かれる。朝はまじめな顔で会社に向かうサラリーマンが、夜にカラオケで騒いでいるのを見て、また驚く。単一的なようで、実はすごく多様な社会。先進的であるようで、伝統を重んじる社会。そのコントラストと共存状態は、世界でもなかなか見られるものではない。

日本の魅力は、フワフワしていて、それを表現する的確な言葉を探すのが難しい。ドバイのような世界一の高層ビルや、上海のリニアモーターカー、パリの美しい街並みなどとは異なり、一言では言い表せないよさが日本にはあるが、それが、実際に日本を訪れて体験しないと感じてもらえないというのが、どうにももどかしい。

忘れられた日本を、どうにかしたいなら

もちろん旅行中だから、楽しいことばかりが目につくというのはあるだろう。どんなに日本ファンになっても、卒業後に日本で就職しようと思うHBS生がほぼ皆無なのも事実だ。しかし、遠い外国からも関心を集め、数日間過ごしただけで大ファンにさせてしまう魅力が、日本にはある。

日本人は外に目を向けるのが好きで、海外の新しいものを貪欲に取り込もうとする。わざわざ海外の大学院に通う私も、そのひとりだろう。しかし、最近思うに、海外を「買う」ばかりではなく、日本を「売る」ことにもっと力を入れるべきなのではないか。

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