モノの所有が段々「時代遅れ」になっていく理由 「共有」「シェア」「つながり」が新たな価値だ

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家事や子育て、介護もそうですが、今、家庭の中にあって収入にならないと思われている仕事だって、本来は誰かのためになる価値であるはずです。シェアプラットフォームによって、そのような価値を「見える化」すれば、やっている本人も必要としている人も、その意義を確かめ合うことができます。

シェアすることで、あらゆる制約から解放され、もっと身軽に、不自由さを感じずに生きていくことができる。私はそう考えています。

家、車、洋服……これまで私たちは、生活に必要な「よりよいモノ、より質の高いモノ」を得るために一生懸命働いてきた。けれど、その結果、自由な時間は減り、捨てられないモノが増え、それが自分を不自由にしていることに気づきはじめているのではないでしょうか。

「今すぐ海外に住みたいのに決められない……」

「今すぐ会社を辞めたいのに、辞められない……」

今の生活を維持するために所有してきたモノは、今の生活を変えたいときには心理的・物理的ハードルになってしまうのです。

しかし、生活においてあらゆるモノを共有すれば、好きな時間に好きな場所で好きなだけ利用したり、一時所有したりすることができる。毎日の生活をシェアに変えることで、モノを所有することでの不自由さや、自分を制約しているものから解放され、もっと自由に、新たな豊かさを得ることができるのです。

新たな豊かさとは「つながり」

そして、シェアすることで生まれる最も大きな価値は「つながり」です。つながりが、お金や社会的ステータスのような、これまで個人の資産とされてきたものと同じ価値をもつ時代がきたのです。私はこれを「つながり資産」と呼んでいます。

つながりを資産だと捉える考え方は、「社会関係資本=ソーシャルキャピタル」ともいわれています。アメリカの政治学者ロバート・パットナムは、人々が他人に対して抱く「信頼」、それに「お互いさま」「持ちつ持たれつ」といった言葉に象徴されるような「互酬性の規範」、人や組織のあいだの「ネットワーク(絆)」を「ソーシャルキャピタル」と呼び、個人にも社会にも利益をもたらすものであると提唱しています。

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現代のような先行き不透明な時代において、確かな安心を買える資産こそ、「つながり」です。

何かあったら手を差し伸べてくれる人が思い浮かぶこと――明日、もし地震が起こっても、泊まらせてくれる家や、助けてくれる人のつながりがあること、信頼できて気軽に頼れるコミュニティーがあること――そのようなつながりを増やしていくことが、これからの時代を生きる上での重要な資産になるのだと確信しています。

そして、その「つながりをどれだけ貯められるか」が、これからの新たな「豊かさ」の指標になるのではないかと私は考えています。

石山 アンジュ 内閣官房シェアリングエコノミー伝道師

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いしやま あんじゅ / Anju Ishiyama

1989年生まれ。都内シェアハウス在住、実家もシェアハウス経営。2012年国際基督教大学卒。(株)リクルート、(株)クラウドワークスを経て現職。「シェアガール」の肩書でシェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルの提案活動を行う。また総務省・厚生労働省・経済産業省等と連携し、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。ほかNewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMCを務めるなど幅広く活動。著書に『シェアライフ』(クロスメディア・パブリッシング)。一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長も務める。

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