モノの所有が段々「時代遅れ」になっていく理由 「共有」「シェア」「つながり」が新たな価値だ

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組織から個人へ。豊かさの概念も変わってきています(写真:シルバーブレット/PIXTA)
1つの企業で定年まで働き、貯めたお金で家や車、その他たくさんのモノを所有し、社会保障に守られて一生を終える――。そんな「幸せ」のロールモデルはすでに崩壊した。これからの時代では、組織にもお金にもモノにも依存しない生き方が求められる。
そんな中で今、注目を集めているのが「シェアリングエコノミー(共有経済)」という概念。なぜ今、シェアが注目されているのか? シェアが生み出す価値とは? 内閣官房シェアリングエコノミー伝道師・石山アンジュ氏の著書『シェアライフ』の内容を一部抜粋し、再構成のうえお届けします。

今、シェアリングエコノミーが注目されている理由

民泊にライドシェア、フリマアプリにクラウドソーシング……近年、世界中で「シェア」の概念に基づくサービスが広がり始めています。

なぜ今、シェアが注目されているのか? それには2つの背景があります。

1つは、インターネットの登場とテクノロジーの発展によって、個人間でのやり取りが、簡単にできるようになったことです。自分が持っているものと相手が必要としているものを「見て」知ることができる。時間や距離という制約を越えて、複数の人との貸し借りや売買、その他のやり取りが一瞬で可能になる。さらに、位置情報の活用や決済システムの進化などにより、個人間でのやり取りは現在進行形で、よりスムーズに、便利になってきています。

もう1つは、個人のあいだでも社会のあいだでも、シェアという思想への共感が広がりつつあること。拙著『シェアライフ』でも詳しく解説していますが、現代では、「組織中心」から「個人中心」の社会へとパワーシフトが起こり、「豊かさ」の概念が物質的なものから内面的なものへ変化しています。そんな中で、個人間の信頼関係を大切にすることで成り立つシェアが共感を呼ぶのは、必然的といえます。

このような背景から、「シェア=新たな社会をつくるもの」としての可能性が注目されているのです。

従来の私たちの生活は、基本的には、企業がつくったものを買い、所有し、消費する「BtoC(Business to Consumer)」のモデルで成り立ってきました。

これに対して、シェアリングエコノミーは、「CtoC(Consumer to Consumer)」というモデルを可能にしました。個人が使っていないモノやスペース、時間や知識、スキルまで、あらゆるものが商品になり、個人がサービスの提供者となることができます。さらに、自分たちで値段を決めたり、あるいは無償で譲り合ったりと、企業ではなく個人の裁量に基づいてやり取りできるのです。

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