東北各地に増殖「オレンジ色」高速バスの正体 ウィラーの「ピンク」に並ぶ認知度を得るか

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川西氏がみちのりHDに提案した複数案の中から選ばれたのは、オレンジとシャンパンゴールドという組み合わせだ。

シャンパンゴールドの塗装は光線状態によって違う表情を見せる(記者撮影)

寒空の下で待っている乗客にとって、暖色系のオレンジは「ほっとする」色に違いない。シャンパンゴールドは、晴れ、曇り、朝、夕方など天気や時間帯の条件によって白っぽく見えたり、黒っぽく見えたりする。どんな条件でも安定して見えるオレンジ色との対比が面白いとみちのりHD側に評価されたようだ。

2018年から茨城交通、日立電鉄交通サービス、会津乗合自動車などの傘下企業が自社の車両の塗り替え、あるいは中古車両の購入時に新デザインに切り替えた。そして年末に南部支社が一気に7台の新車を導入。グループ全体でオレンジ色のバスは17台になった。今年3月までにはさらに11台が登場する予定だ。

「安全・安心の色」になれるか

「現在保有しているバスを一斉に塗り替えるのは多額のコストがかかるので、新車導入などのタイミングを見ながら、少しずつ新デザインに置き換えていく」とみちのりHDの担当者は説明する。

グループ内の高速バスの数を合計すると約280台。東北を走るピンク色のウィラーのバスは38台なので、将来すべてのバスがオレンジ色に塗り替えられれば、MEXの存在感は大きく高まる。

複数の候補から高速バスを選ぶ際には時間帯、料金、座席の広さやWi-Fiの有無などが決め手となるが、「オレンジのバス、知ってる」という知名度も武器になる可能性がある。

しかし、グループでのブランド統合は、万が一グループの中の高速バスが1社でも事故を起こせば、その影響がグループ会社すべてに波及するということでもある。居眠り、経験不足など運転士が原因の高速バス事故は後を絶たない。さらに、運転士不足という問題が拍車をかける。オレンジ色は「暖かみがある色」というだけではなく、「安全、安心の色」という信頼感の醸成につなげることが重要だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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