日本がはまり込んだ深刻な「貧富格差」の現実 所得格差のレベルは先進国でワースト8位

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一方、相対的貧困については「OECD(経済協力開発機構)」のデータがベースになっている。最近のデータがないためにはっきりしたことは言えないが、2011年の時点の中国の相対的貧困率は28.8%に達している。13億人の約3割、5億人弱が貧困層となっていたわけだが、いまやこの数字は大きく改善していると考えるのが自然だろう。鄧小平が進めた開放政策以降、中国では6億人程度が貧困から救われたと言われている。

中国に次いで貧困層の多い国は、やはり人口の多いインドということになるのかもしれないが、貧困率のデータではインドは世界第5位になっている。ちなみに、貧困率の高い国はデータでは次のような結果になっている(2016年現在、OECD調べ、調査年は各国によって異なり2011年~2015年、出所:グローバルノート)。

1. 中国……28.80%
2. 南アフリカ……26.60%
3. コスタリカ……20.90%
4. ブラジル……20.00%
5. インド……19.70%
6. アメリカ……17.80%
7. イスラエル……17.70%
8. トルコ……17.20%

ちなみに、こうした貧困のデータは164カ国を対象とした世帯調査に基づいており、各国の政府によって3~5年ごとに実施されているが、データの収集や分析は国によって大きく異なるため、なかなか最新の数値が出てこない。

いずれにしても、この四半世紀で貧困層を救済するという点では、人類は大きな前進を遂げたと言っていいだろう。

日本の所得格差は先進国中ワースト8位?

さて、日本の貧困問題はどうなっているのだろうか。日本の貧困問題とは相対的貧困であり、言い換えれば格差社会の表れであることをきちんと把握するべきだろう。

格差社会についてはさまざまなデータがあり、世界の超富裕層8人と下位36億人の資産額が同じといったデータ(NGO団体「オックスファム」調査)には驚くばかりだが、日本の所得格差も実は深刻なレベルに達している。

たとえば、ユニセフの調査によると日本の所得格差のレベルはOECD加盟41カ国中、格差が大きい順に8位という報告がされている。先進国の中でワースト8になる。これはユニセフがまとめた報告書「子どもたちのための公平性」によって指摘されたもので、底辺に置かれた子どもが平均的な子どもから比べてどの程度を取り残されているかを示したもの。いわゆる「底辺の格差」と呼ばれるもので、所得や学習到達度、主観的な健康状態、生活満足度などに関して、平均的な子どもと比較した数値である。

同報告書によると、世界全体で見て1985年から2012年にかけての子どもの相対的所得は拡大しており、中間層の所得は上昇したものの、底辺では逆に減少している、という指摘がされている。

とりわけ、先進国で暮らしている子どもの貧困は徐々に拡大しており、2002~2014年の12年間で、すべての先進国の子どもの、貧困の格差は拡大していることが示されている。

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