東京駅を舞台にしたラブストーリー映画の魅力 本木克英監督「邦画には、こういう映画があってもいい」

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終電後の東京駅で撮影というスケジュール

――終電が終わった後に東京駅で撮影したと伺っていますが、撮影はかなり大変だったのでしょうか。

最初はみんなワクワクしながら臨んでいましたが、終電が出る時間というのはもう午前1時前後。それから構内のすべてのお客様が出てから、スタッフ100人余りとエキストラの方100人余りが入っていって構内の人混みを再現していく。制限時間が2時間半くらいでしたので、どう組み立てて撮っていくか、毎日、ほんとに戦争のような状態でした(笑)。

しかも3時半ごろにはもう夜が明けてくるのです。だから、入った瞬間にもう焦っているような状態です。その制限時間の中でどれだけのカット数を撮れるかというのが、演出意図としてはありました。ワンカットを丁寧に何度も撮るというのではなく、1日で何十カットいけるか?というようなことです。助監督の分も僕がやっていたような感じがします。「あと何時間で、何分で何カット撮るぞ」というような感じで。

――現場はかなりピリピリしていたのですか?

していると思うでしょ? ところが、カメラマンも照明もこうした映画を撮る機会がないものですから、ものすごく前向きに取り組んでいました。日本人のやさしさとか穏やかさとか、人に対する愛情みたいなものを素直に描いたものが、わりと最近少ないと思っていたので、「こういう映画があってもいいなとか、この映画を見たいな」という気持ちがあったのだと思います。スタッフもみんな、僕に怒鳴られながらも取り組んでくれました。

――JR東日本さんの協力がかなりあったと思いますが。

まったく無人の駅の構内に夜中入って行くので、特別な経験をさせてもらっているなというすごい高揚感がありました。普段見ることのできない景色を見ることができた。駅の構内がスクリーンなのです。白紙の状態で駅があって、そこにどんどんエキストラを配置して準備をしていく。今思えば、とてもやりがいのあった仕事でした。

(C)2013 「すべては君に逢えたから」製作委員会
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