2011年10月5日、56歳の若さで亡くなったスティーブ・ジョブズは、1976年に自宅のガレージでアップルコンピュータを創業する。そしてわずか4年で同社の株式を上場させ、その後もMacintosh、iMac、iPod、iPhoneといった革新的な新製品を続々と発表。一躍、時代の寵児となった。パソコン、通信、音楽などの業界地図をガラリと変え、熱狂的な支持者を生み出したカリスマとしてのイメージが強いジョブズ。しかし、それとは裏腹に独善的で激情的な側面もあり、多くの敵を作り出してきた人物でもあった。
そんな希代のカリスマの光と影にスポットを当てた映画『スティーブ・ジョブズ』(11月1日から全国公開)は、ジョブズ没後、初の伝記映画となる。青年期のジョブズがいかにしてアップルコンピュータを創業したのか。そして誰よりも熱い情熱とこだわりを持って時代の寵児となったにもかかわらず、なぜ自分が創業した会社から追放されてしまったのか。さらにジョブズは、いかにして挫折から再び立ち上がったのかを通じて、彼の素顔に迫る。
本作のメガホンをとったのは、ジョシュア・マイケル・スターン。「今後、ジョブズの物語はテレビやドラマなどで繰り返し生み出されるだろう」と予期する彼は、「私の目標はその決定版を作ること。それだけの覚悟がなければできないテーマだった」と、本作の決意を語っている。スターン監督に、本作を生み出した背景。ジョブズに対して思うことなどを聞いた。
――アップルのファンは、新製品に対する期待値が高いことでも有名です。「今回はこんな機能が入っていた」「あの機能は入れてほしかった」等々、新製品が登場するたびに一喜一憂しています。この映画に対しても、「あのエピソードはないの?」といった意見が数多く寄せられると思いますが、監督も同様のプレッシャーを感じているのではないでしょうか?
それがこの映画を作るうえでのいちばん大きなチャレンジだった。確かにいろいろな人がジョブズの物語に対して期待を抱いていると思う。でも、映画では、ジョブズの約30年間の出来事を2時間に収めないといけない。確かにファンの皆さんは、「あのエピソードを入れてほしい」と言うと思う。ただ、同時にアップルのファンでない人も、この映画を見るわけだからね。そういった人たちにも、非常にわかりやすいストーリーを作り出すことも僕の仕事だと思っている。
たとえば、今回は入れられなかったエピソードとして、ジョブズがゼロックスに行って、ユーザーインターフェースを見学する部分があった。僕としてはそれを入れたかったが、それを入れるためには、その背景を説明したりしなければならない。その時点ですでに映画は2時間を超えていたので、それを入れるのはあきらめた。結局、この映画は、僕が思うスティーブ・ジョブズについての解釈を示したもの。もしほかの人が作るのなら、別のエピソードを持ってきて、違うように作るのだ思うよ。
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